◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
時計の針が天辺を指し日付が変わった。ベッドから立ち上がり部屋の電気を消す。着替えずにいて正解だ。玄関のドアを閉めて静まり返った深夜の里を歩き始めた。
空に浮かぶ三日月を追いかけるように里の中心へと足を運ぶ。なんとなくだけど、彼がどこにいるか分かるような気がする。動揺から不義理な行為が浮かんだが、彼は不実な人ではない。二人の時間が上辺だけではないと虚勢を張る自分の為にも信じることにした。浮気ではないのなら、彼は一人で夜の中にいる。シカマルが知らないのだから執務室ではないだろう。だとしたら。
里を守るようにそびえる火影岩を仰ぎ見た。あそこに彼がいるような気がする。熱量は変わっても通じ合う心は同じはずだ。信じた道は間違っていないと足に力を入れて走り出した。夜中に里を疾走するなんていつぶりだろうか。子ども達が見たら校長先生はどうしたんだと大騒ぎだ。久しぶりの高揚感に体全体が騒ぎ出す。くふくふと湧き上がる笑いをそのまま顔に乗せ走り続けた。
月の明かりを浴びる銀色の髪。予想通りの場所に願った通りの人がいた。遮る物の無い場所でポツリと浮かぶ背中は彼そのもので胸が苦しくなる。あの背中を振り向かせることが出来たと思っていた。カカシさんは向き合ってくれていると思っていたのに、勘違いだったのだろうか。俺がいることなどとうに気づいているはずが、微動だにしない背中へ近づくのが怖い。竦む足を鼓舞して彼の後ろへ立った。
「カカシさん」
「見つかっちゃいましたね」
「帰って来ないんですか」
「帰るに決まってるでしょ。ちょっと仕事が忙しかったんで、ここで空気を吸ってからと思って寄り道しただけですよ」
背中を向けたまま嘘を吐く。こちらは仕事ではなかったと知っているのだ。口を開いたがどう問い詰めれば良いのか分からず止まってしまった。
若い頃は僅かな時間が嬉しくて何も考えなかった。一緒にいられるようになってからは、いつ以前のようになるか分からないと怯えて、平穏に過ごすことを第一にした。ようやく安心できるようになった頃は、もうそれまでの自分をなぞることしか出来なくて、こういう時にどう言えば良いのか分からない。穏やかな生活は波風が無かったけれど、それはそのままお互いの中に全て埋めてきただけのことで、本当に向き合って話したことなどなかったかもしれない。彼のことが好きで、ただ一緒に笑っていたかった。それを本当の自分なのかと問われたら。
「カカシさん、俺のこと見えてます?」
ぴくりと動いた肩がぐるりと回る。月を背負って振り向いた人の顔は見えない。ずるい人だ。
「先生?どうかしたの」
大事なものを手に入れた。失いたくなくて格好つけていたけれど、そのせいで失いそうだ。覚悟は一瞬で決まった。間違っていたというのなら、本来の自分の形をぶつける方がいい。息を吸って震える喉から思い切り声を出した。
「嘘つき!」
「え?」
「嘘つき!嘘つき!大嘘つき!」
「ちょっ、ちょっと先生どうしたの」
大声を絞り出す喉と鼻の奥が熱い。慌てたように飛んできたカカシさんが眉を下げて覗き込む。その顔に向けてもう一度大きく「嘘つき!」と叫んだ。
「何が嘘つきなの。落ち着いて話して」
「仕事じゃない。忙しくない」
「……」
「帰ってきたくないならそう言ってくださいよ。俺のことが嫌いになったなら、今の生活をやめたくなったなら」
「違う!そんなこと思ってないよ」
「じゃあ何で!」
堪えきれず滲み始めた涙を瞬きで散らす。いい年をして俺達は何をやっているんだ。こんな痴話げんかは若い内に済ませておくべきものだ。普通なら十年以上も共にいる人と穏やかに過ごす時期に入っているはずなのに、こんな真夜中に泣きながら叫ぶなんて。
涙目で睨み付ける俺を見る目がふっと可笑しそうに撓んだ。笑いを溢しながら伸びる指先が散りきらなかった涙を拭う。
空に浮かぶ三日月を追いかけるように里の中心へと足を運ぶ。なんとなくだけど、彼がどこにいるか分かるような気がする。動揺から不義理な行為が浮かんだが、彼は不実な人ではない。二人の時間が上辺だけではないと虚勢を張る自分の為にも信じることにした。浮気ではないのなら、彼は一人で夜の中にいる。シカマルが知らないのだから執務室ではないだろう。だとしたら。
里を守るようにそびえる火影岩を仰ぎ見た。あそこに彼がいるような気がする。熱量は変わっても通じ合う心は同じはずだ。信じた道は間違っていないと足に力を入れて走り出した。夜中に里を疾走するなんていつぶりだろうか。子ども達が見たら校長先生はどうしたんだと大騒ぎだ。久しぶりの高揚感に体全体が騒ぎ出す。くふくふと湧き上がる笑いをそのまま顔に乗せ走り続けた。
月の明かりを浴びる銀色の髪。予想通りの場所に願った通りの人がいた。遮る物の無い場所でポツリと浮かぶ背中は彼そのもので胸が苦しくなる。あの背中を振り向かせることが出来たと思っていた。カカシさんは向き合ってくれていると思っていたのに、勘違いだったのだろうか。俺がいることなどとうに気づいているはずが、微動だにしない背中へ近づくのが怖い。竦む足を鼓舞して彼の後ろへ立った。
「カカシさん」
「見つかっちゃいましたね」
「帰って来ないんですか」
「帰るに決まってるでしょ。ちょっと仕事が忙しかったんで、ここで空気を吸ってからと思って寄り道しただけですよ」
背中を向けたまま嘘を吐く。こちらは仕事ではなかったと知っているのだ。口を開いたがどう問い詰めれば良いのか分からず止まってしまった。
若い頃は僅かな時間が嬉しくて何も考えなかった。一緒にいられるようになってからは、いつ以前のようになるか分からないと怯えて、平穏に過ごすことを第一にした。ようやく安心できるようになった頃は、もうそれまでの自分をなぞることしか出来なくて、こういう時にどう言えば良いのか分からない。穏やかな生活は波風が無かったけれど、それはそのままお互いの中に全て埋めてきただけのことで、本当に向き合って話したことなどなかったかもしれない。彼のことが好きで、ただ一緒に笑っていたかった。それを本当の自分なのかと問われたら。
「カカシさん、俺のこと見えてます?」
ぴくりと動いた肩がぐるりと回る。月を背負って振り向いた人の顔は見えない。ずるい人だ。
「先生?どうかしたの」
大事なものを手に入れた。失いたくなくて格好つけていたけれど、そのせいで失いそうだ。覚悟は一瞬で決まった。間違っていたというのなら、本来の自分の形をぶつける方がいい。息を吸って震える喉から思い切り声を出した。
「嘘つき!」
「え?」
「嘘つき!嘘つき!大嘘つき!」
「ちょっ、ちょっと先生どうしたの」
大声を絞り出す喉と鼻の奥が熱い。慌てたように飛んできたカカシさんが眉を下げて覗き込む。その顔に向けてもう一度大きく「嘘つき!」と叫んだ。
「何が嘘つきなの。落ち着いて話して」
「仕事じゃない。忙しくない」
「……」
「帰ってきたくないならそう言ってくださいよ。俺のことが嫌いになったなら、今の生活をやめたくなったなら」
「違う!そんなこと思ってないよ」
「じゃあ何で!」
堪えきれず滲み始めた涙を瞬きで散らす。いい年をして俺達は何をやっているんだ。こんな痴話げんかは若い内に済ませておくべきものだ。普通なら十年以上も共にいる人と穏やかに過ごす時期に入っているはずなのに、こんな真夜中に泣きながら叫ぶなんて。
涙目で睨み付ける俺を見る目がふっと可笑しそうに撓んだ。笑いを溢しながら伸びる指先が散りきらなかった涙を拭う。
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先天的女体化・年齢パロ・オメガバ・現パロ・各年代ごった煮です。
特殊設定にはひと言ついておりますのでご確認ください。
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