◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
「イルカ先生、だね」
どういう意味かと戸惑う瞳に唇が吸い付く。ちゅっと涙を吸って鼻傷の上にもキスを一つ。
「イルカ先生に戻ったみたいだ」
「……俺はいつだってイルカです」
語尾が小さくなってしまったのは、自分でも分かっているから。会う時間の少ない恋人へいい格好をしたくて肩肘張っていた。三代目の前で食ってかかったような顔はずっと奥に隠していたのだ。カカシさんもあの時のような顔は見せなかった。きっと、恋人となった俺を大事に思ってくれたから。
「いつだってどんな先生も好きだよ」
「じゃあ教えてくださいよ。どうして帰って来ないんですか。仕事なんて嘘でしょう?一人でこんなとこに座ってたじゃないですか」
俯いてガリガリと頭を搔く。促すようにベストの端を掴むとぎゅっと抱き締められた。
「格好悪いから、このまま聞いて」
首筋にかかる息がくすぐったい。肩口から染み込む声の熱さに黙って頷いた。安堵したように深いため息がかかる。
「ナルトを火影にする準備が出来ました。引き継ぎも終わらせて六代目は引退する。そうしたら俺は、もっと長い時間家にいるようになります。俺達は互いに忙しかったけれど、一緒に過ごす時間を大事にしてきました。二人でいる時はなるべく嫌な思いをしないように、笑い合えるように。特に昔は、お互いいつ『ただいま』と言えなくなるか分からなかったし」
思わず手にぐっと力が入った。ベストを引っ張られたカカシさんが宥めるようにぽんぽんと背中を叩く。深く息を吐いて彼の肩に顔をうずめた。すりと寄せられた頬が熱い。
「生活が変わる、と思いました。これからは俺があなたを出迎えることも増えるでしょう。ただの忍から上忍師になったり火影になったりそれなりに変化はあったけど、仕事は何とかやってきた。でもいざあなたと向かい合うんだと思ったら無性に怖くて堪らない。待つ立場になるのは初めてかもしれない。今までと同じようにやれるんだろうか。あなたを失望させずにいられるんだろうか。考え始めたら止まらなくなって」
「一人でここに?」
「いつの間にか」
ごめんねと伝えるように腕に力が入る。強く抱き締められて重なる鼓動が体中に響き、気持ちを落ち着かせてゆく。一緒だと思えることがこれほどまでに安らぎを与えてくれるとは知らなかった。二人とも覆い隠すことに慣れてしまっていたせいだ。
「言ってくれれば良かったのに」
「ヤだよ」
「どうして」
「だって格好悪いでしょ。俺はいつだって先生の前で格好良くいたいもん。先生に好きでいて欲しいから」
拗ねたようにぐりぐりと頭を押し付けられて笑ってしまった。好きな相手の前では格好良くありたい。どうしたって避けられない男の心理だ。
「カカシさんはいつだって格好良いですよ」
「本当?」
ガバッと起き上がった瞳がまじまじと見つめてくる。笑いを堪えながら頷くと、「えー?」と言いながら俺を解放し腕を組む。
「最近お腹が出てきたなあと思ってるんですよ。それでも?」
「あんたで腹が出てるって言ったら暴動が起きますよ」
「じゃあ内緒のとっておき」
んんっと咳払いをして辺りを見回す。俺達以外誰もいないっていうのに念入りなことだ。
「実は白髪が増えてきたなーなんて。銀髪なんで分かりにくいんですけど」
「えっ?気づきませんでした。どこに?」
「ここ。ほらこめかみの辺り。分かる?」
「…………あー確か、に?でも全然目立たないから分かんねえや」
「そう?」
パッと明るい表情でうふふと笑う。格好良さ云々と言っていたくせに。
「なら俺も。最近、ひょっとしたら老眼が出始めてるかもって。小さい字に焦点が合いにくいような」
「早くない?」
「そう思いたいんですけど、なんだかんだもう四十ですし」
「そうだね。俺達、もう長いこと一緒にいる。実際一緒に過ごした時間はその何分の一だろう。思う通りに心の中をぶつけたのはどれ位あったかな」
「これからは、今までよりも短い時間の中だとしても二人で過ごすのは長くなるんでしょうね。思ってることを言うのも増えるでしょう。それでいいんじゃないですか」
怖いなら怖いなりに。手を離さないと誓ってさえいれば不安などいずれ消える。
「先生は格好いいなあ」
「今さらでしょ」
あははと笑いながら手を握る。家に帰ろうと引く手に逆らわず共に歩き出した。
「不安にさせてごめんね。思ってることは言った方がいいですね。泣き顔を見るのは悪くないけど」
「悪趣味」
「早速つるつる出てますねえ」
「腹くくったら怖いもんなしです。カカシさんもどうぞお好きなように」
「そう?」
じゃあ遠慮なく、と思い切り手を引っ張られた。つんのめった体を掬い上げられ、抱きかかえられたまま闇の中へダイブする。俺を抱えて失踪する人の首にしがみつき、二人で笑いながら夜の里を駆け抜けた。玄関のドアを開ける彼に飛びついていた頃へ戻ったようだ。浮かれすぎだと諫める自分は岩の上に置いてきた。
ペタリと貼り付く冷たさに声にならない叫びが漏れる。
「ごめんね、大丈夫?お休みの連絡はしたよ」
「……浮かれすぎだ。物事には加減ってものがっ!いっ!!」
「ごめんって!」
興奮のあまり起き上がろうとして撃沈。腰の痛みにたまらずベッドへ沈み込んだ。おろおろと眉を下げた人は広げた両手をバタバタさせている。腰を擦ろうか、触ったら痛いだろうかと逡巡する心に合わせ、彼の大きな手が蝶のようにヒラヒラ舞う。あれほど格好に拘っていたくせに、一晩ですっかり忘れてしまったようだ。そんな顔を見られるのも嬉しいけれど。
いつものような穏やかな朝は消えて賑やかな始まりになったが、こういう毎日も悪くない。きっと悪くない。
どういう意味かと戸惑う瞳に唇が吸い付く。ちゅっと涙を吸って鼻傷の上にもキスを一つ。
「イルカ先生に戻ったみたいだ」
「……俺はいつだってイルカです」
語尾が小さくなってしまったのは、自分でも分かっているから。会う時間の少ない恋人へいい格好をしたくて肩肘張っていた。三代目の前で食ってかかったような顔はずっと奥に隠していたのだ。カカシさんもあの時のような顔は見せなかった。きっと、恋人となった俺を大事に思ってくれたから。
「いつだってどんな先生も好きだよ」
「じゃあ教えてくださいよ。どうして帰って来ないんですか。仕事なんて嘘でしょう?一人でこんなとこに座ってたじゃないですか」
俯いてガリガリと頭を搔く。促すようにベストの端を掴むとぎゅっと抱き締められた。
「格好悪いから、このまま聞いて」
首筋にかかる息がくすぐったい。肩口から染み込む声の熱さに黙って頷いた。安堵したように深いため息がかかる。
「ナルトを火影にする準備が出来ました。引き継ぎも終わらせて六代目は引退する。そうしたら俺は、もっと長い時間家にいるようになります。俺達は互いに忙しかったけれど、一緒に過ごす時間を大事にしてきました。二人でいる時はなるべく嫌な思いをしないように、笑い合えるように。特に昔は、お互いいつ『ただいま』と言えなくなるか分からなかったし」
思わず手にぐっと力が入った。ベストを引っ張られたカカシさんが宥めるようにぽんぽんと背中を叩く。深く息を吐いて彼の肩に顔をうずめた。すりと寄せられた頬が熱い。
「生活が変わる、と思いました。これからは俺があなたを出迎えることも増えるでしょう。ただの忍から上忍師になったり火影になったりそれなりに変化はあったけど、仕事は何とかやってきた。でもいざあなたと向かい合うんだと思ったら無性に怖くて堪らない。待つ立場になるのは初めてかもしれない。今までと同じようにやれるんだろうか。あなたを失望させずにいられるんだろうか。考え始めたら止まらなくなって」
「一人でここに?」
「いつの間にか」
ごめんねと伝えるように腕に力が入る。強く抱き締められて重なる鼓動が体中に響き、気持ちを落ち着かせてゆく。一緒だと思えることがこれほどまでに安らぎを与えてくれるとは知らなかった。二人とも覆い隠すことに慣れてしまっていたせいだ。
「言ってくれれば良かったのに」
「ヤだよ」
「どうして」
「だって格好悪いでしょ。俺はいつだって先生の前で格好良くいたいもん。先生に好きでいて欲しいから」
拗ねたようにぐりぐりと頭を押し付けられて笑ってしまった。好きな相手の前では格好良くありたい。どうしたって避けられない男の心理だ。
「カカシさんはいつだって格好良いですよ」
「本当?」
ガバッと起き上がった瞳がまじまじと見つめてくる。笑いを堪えながら頷くと、「えー?」と言いながら俺を解放し腕を組む。
「最近お腹が出てきたなあと思ってるんですよ。それでも?」
「あんたで腹が出てるって言ったら暴動が起きますよ」
「じゃあ内緒のとっておき」
んんっと咳払いをして辺りを見回す。俺達以外誰もいないっていうのに念入りなことだ。
「実は白髪が増えてきたなーなんて。銀髪なんで分かりにくいんですけど」
「えっ?気づきませんでした。どこに?」
「ここ。ほらこめかみの辺り。分かる?」
「…………あー確か、に?でも全然目立たないから分かんねえや」
「そう?」
パッと明るい表情でうふふと笑う。格好良さ云々と言っていたくせに。
「なら俺も。最近、ひょっとしたら老眼が出始めてるかもって。小さい字に焦点が合いにくいような」
「早くない?」
「そう思いたいんですけど、なんだかんだもう四十ですし」
「そうだね。俺達、もう長いこと一緒にいる。実際一緒に過ごした時間はその何分の一だろう。思う通りに心の中をぶつけたのはどれ位あったかな」
「これからは、今までよりも短い時間の中だとしても二人で過ごすのは長くなるんでしょうね。思ってることを言うのも増えるでしょう。それでいいんじゃないですか」
怖いなら怖いなりに。手を離さないと誓ってさえいれば不安などいずれ消える。
「先生は格好いいなあ」
「今さらでしょ」
あははと笑いながら手を握る。家に帰ろうと引く手に逆らわず共に歩き出した。
「不安にさせてごめんね。思ってることは言った方がいいですね。泣き顔を見るのは悪くないけど」
「悪趣味」
「早速つるつる出てますねえ」
「腹くくったら怖いもんなしです。カカシさんもどうぞお好きなように」
「そう?」
じゃあ遠慮なく、と思い切り手を引っ張られた。つんのめった体を掬い上げられ、抱きかかえられたまま闇の中へダイブする。俺を抱えて失踪する人の首にしがみつき、二人で笑いながら夜の里を駆け抜けた。玄関のドアを開ける彼に飛びついていた頃へ戻ったようだ。浮かれすぎだと諫める自分は岩の上に置いてきた。
ペタリと貼り付く冷たさに声にならない叫びが漏れる。
「ごめんね、大丈夫?お休みの連絡はしたよ」
「……浮かれすぎだ。物事には加減ってものがっ!いっ!!」
「ごめんって!」
興奮のあまり起き上がろうとして撃沈。腰の痛みにたまらずベッドへ沈み込んだ。おろおろと眉を下げた人は広げた両手をバタバタさせている。腰を擦ろうか、触ったら痛いだろうかと逡巡する心に合わせ、彼の大きな手が蝶のようにヒラヒラ舞う。あれほど格好に拘っていたくせに、一晩ですっかり忘れてしまったようだ。そんな顔を見られるのも嬉しいけれど。
いつものような穏やかな朝は消えて賑やかな始まりになったが、こういう毎日も悪くない。きっと悪くない。
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