◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
◇現パロ/kkir未満
視点が変わると景色が変わる。
使い古された言葉を、俺はいま物理で体現している。
「次は木ノ葉一丁目、木ノ葉一丁目です」
静かな響きが聞こえるたび妙な気分になり、視界の端に映る腕を見つめてしまう。太陽に愛された小麦色の逞しい腕はぐっと捲り上げた袖から二の腕まで見えていた。
普段座ることなどない運転手の真後ろの席は、少し窮屈だ。
バスに乗ることはあっても、座るより立つ方が多い。最初は空いていても、進むほど混雑度は変化する。途中で席を変わるのは煩わしく、それならばと立つ方が楽だった。
今日もいつものように立っていたのだが、途中で急に混み始めたせいか降り口の方へ追いやられてしまった。ぎゅうぎゅう詰めの車内で座席の前を塞いでいるわけにもいかず、やむを得ず目の前の段差を上って一番前の席へ腰掛けた。
数段高い座席は窓の外がよく見える。少し開けられた窓から入り込む新鮮な空気にホッとして、わずかに体を外へ傾けた。ぼんやりと外を眺める目の端で何かが眩しい。目を細めて見やると光を反射する運転席のスイッチがあった。
思った以上に近い。手を伸ばせば届く気がする。
運転席との間には衝立があるというのに、ふざけた考えが頭を過ぎる。
触れないスイッチというのはどれだけ年をとろうと魅力的に見えるらしい。
「木ノ葉茶通り、木ノ葉茶通りです」
機械的なアナウンスの後に柔らかい声が響く。ほぼ満員のバスはぶしゅうと音を立てながらゆっくりと車体を傾けた。
大勢の人を吐き出し軽くなったバスはまた走り出す。ついさっきまではすぐ横にまで大勢の人が立っていたのに、ほとんどいなくなっていた。
人が減った車内なら、もう座らなくても問題はないだろう。持て余していた足を伸ばすべく狭い席の上で傾けていた体を起こすと、窓際のスイッチへと伸びた手が大きく視界へ割り込んできた。
健康的と言えるほど逞しく、ほどよく太陽に焼けた腕は、先程聞いた声に不釣り合いだ。
何よりも、袖。二の腕が見えるほど捲り上げた袖が、どうも聴覚と視覚の一致を妨げる。ボタンへと伸ばされた指がダメ押ししてきた。
「次は木ノ葉一丁目、木ノ葉一丁目です」
伸ばされた背筋が背もたれへ戻った。バスの振動に揺られながら、時折現れる腕を待つ。停留所へ着くたびに流れる声と健康的だが無骨な指が、同じ持ち主のものだとは。
こっちの勝手なイメージだ。体が厳つくとも声が高い人間だっているだろう。不思議なことではないかもしれないが、当然次に気になるのはどういう顔をしているのか、ということ。
「次は木ノ葉三丁目、木ノ葉三丁目です」
アナウンスを聞いて降車ボタンへ手を伸ばす。機械的なチャイムの音が大きい。
「木ノ葉三丁目です。バスが止まってからお立ちください」
スイッチを弾く指を見て、窮屈な席から立ち上がる。滑らかに止まるバスは、停車時によくある大きな衝撃を感じさせなかった。
僅かな段差を降り、料金箱の前に立つ。ポケットから出したカードを触れさせた。
「ありがとうございました」
機械の放つ高音が消えぬ間に違う響きが滑り込む。柔らかな声が放たれたのは、人よりも高い位置にある自分の頭の更に上から。降り口へと体を向けながら掠めとるように映した顔は、その声に似た優しい眼差しで微笑んでいた。
とんと降りた後ろから、ドアの閉まる音と、動き出すバスが残した風があおる。大きな風に巻かれたように、妙にクラクラした。
視点が変わると景色が変わる。
使い古された言葉を、俺はいま物理で体現している。
「次は木ノ葉一丁目、木ノ葉一丁目です」
静かな響きが聞こえるたび妙な気分になり、視界の端に映る腕を見つめてしまう。太陽に愛された小麦色の逞しい腕はぐっと捲り上げた袖から二の腕まで見えていた。
普段座ることなどない運転手の真後ろの席は、少し窮屈だ。
バスに乗ることはあっても、座るより立つ方が多い。最初は空いていても、進むほど混雑度は変化する。途中で席を変わるのは煩わしく、それならばと立つ方が楽だった。
今日もいつものように立っていたのだが、途中で急に混み始めたせいか降り口の方へ追いやられてしまった。ぎゅうぎゅう詰めの車内で座席の前を塞いでいるわけにもいかず、やむを得ず目の前の段差を上って一番前の席へ腰掛けた。
数段高い座席は窓の外がよく見える。少し開けられた窓から入り込む新鮮な空気にホッとして、わずかに体を外へ傾けた。ぼんやりと外を眺める目の端で何かが眩しい。目を細めて見やると光を反射する運転席のスイッチがあった。
思った以上に近い。手を伸ばせば届く気がする。
運転席との間には衝立があるというのに、ふざけた考えが頭を過ぎる。
触れないスイッチというのはどれだけ年をとろうと魅力的に見えるらしい。
「木ノ葉茶通り、木ノ葉茶通りです」
機械的なアナウンスの後に柔らかい声が響く。ほぼ満員のバスはぶしゅうと音を立てながらゆっくりと車体を傾けた。
大勢の人を吐き出し軽くなったバスはまた走り出す。ついさっきまではすぐ横にまで大勢の人が立っていたのに、ほとんどいなくなっていた。
人が減った車内なら、もう座らなくても問題はないだろう。持て余していた足を伸ばすべく狭い席の上で傾けていた体を起こすと、窓際のスイッチへと伸びた手が大きく視界へ割り込んできた。
健康的と言えるほど逞しく、ほどよく太陽に焼けた腕は、先程聞いた声に不釣り合いだ。
何よりも、袖。二の腕が見えるほど捲り上げた袖が、どうも聴覚と視覚の一致を妨げる。ボタンへと伸ばされた指がダメ押ししてきた。
「次は木ノ葉一丁目、木ノ葉一丁目です」
伸ばされた背筋が背もたれへ戻った。バスの振動に揺られながら、時折現れる腕を待つ。停留所へ着くたびに流れる声と健康的だが無骨な指が、同じ持ち主のものだとは。
こっちの勝手なイメージだ。体が厳つくとも声が高い人間だっているだろう。不思議なことではないかもしれないが、当然次に気になるのはどういう顔をしているのか、ということ。
「次は木ノ葉三丁目、木ノ葉三丁目です」
アナウンスを聞いて降車ボタンへ手を伸ばす。機械的なチャイムの音が大きい。
「木ノ葉三丁目です。バスが止まってからお立ちください」
スイッチを弾く指を見て、窮屈な席から立ち上がる。滑らかに止まるバスは、停車時によくある大きな衝撃を感じさせなかった。
僅かな段差を降り、料金箱の前に立つ。ポケットから出したカードを触れさせた。
「ありがとうございました」
機械の放つ高音が消えぬ間に違う響きが滑り込む。柔らかな声が放たれたのは、人よりも高い位置にある自分の頭の更に上から。降り口へと体を向けながら掠めとるように映した顔は、その声に似た優しい眼差しで微笑んでいた。
とんと降りた後ろから、ドアの閉まる音と、動き出すバスが残した風があおる。大きな風に巻かれたように、妙にクラクラした。
スポンサードリンク
CP傾向
左右固定ハピエン主義
先天的女体化・年齢パロ・オメガバ・現パロ・各年代ごった煮です。
特殊設定にはひと言ついておりますのでご確認ください。
先天的女体化・年齢パロ・オメガバ・現パロ・各年代ごった煮です。
特殊設定にはひと言ついておりますのでご確認ください。