◆各種設定ごった煮注意

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 嫌な予感ほど良く当たる。薄々感じていたから無理をして来てみたが、ドアを開けた先生の顔を見て、やっぱりと思った。
 晩飯はまだだと言えば、簡単な夜食を用意してくれた。卵焼きと煮物に、茄子の味噌汁。煮詰まっていない汁ができたてだと教えてくれて、当たり前だった時間を思い返す。先生も同じように感じただろうか。

 ごちそうさまと手を合わせ、器を下げた。いつもなら風呂へ入る時間なのに、先生はまだ湯も張らず卓袱台の前に座っている。
「お茶、入れ直しましょうか」
「ううん、それでいいよ」
 もうぬるくなった茶が、まだ半分ほど残っていた。
俺の返事に浮かせかけていた腰を下ろし、両手で包んだ湯飲みを見つめている。全身から伝わる気配を無視して、ぬるい茶を口に含んだ。熱い時よりもずっと苦みが強い。体温と変わらないほどに馴染む温度のくせに。
「あの」
「うん?」
「もう、終わりにしましょう」
 何を、とは聞かない。何で?と聞いてあげるほど優しくない。俺を捨てるのはあなたなんだから、すべて自分から伝えてほしかった。
 ましてや自分が捨てられる切っ掛けなんて、作りたいはずがないだろう。ただ黙って茶を飲み続ける。
 黙ったままでも心地好かった空間が嘘のように、沈黙が痛い。切りつけるような沈黙に耐えられなくなったのは、俺じゃなかった。大きく息を吸って、先生がもう一度同じことを言う。
「終わりにしましょう。もう、俺達は無理です。立場が違いすぎる」
「今だって違うよ」
「たしかにそうですね。だけど比べものにならないって分かるでしょう。あなたは里一番とはいえ上忍でした。里長とは違います。里長の傍らにいるものが、ただの中忍なんてあり得ないですよ」
 ただの中忍、というセリフに思わず力が入った。先生はただの中忍じゃない。アカデミーで里の次代を担う子ども達を育てているのだ。
 これから火影として立つ俺を支えるのも、ゆくゆくその立場を譲るのも、彼が育てた子ども達だろう。たとえ目に見えずとも、何よりも強い力で里を作り上げているのに。
 ゆっくり息を吐き体の力を逃がす。俺は怒ってない。だから声を荒げる必要なんてない。
「中忍じゃなければよかった?」
「別に自分を嫌いなわけじゃありません。だけど、もし火影になるのが俺だったら。火影になった俺とあなただったら……そんな奇跡、起きねえけど」
 奇跡を願うほど俺のことが好きなのに、奇跡が起きなければいっそにいられないって何なんだろう。先生の中のちぐはぐな思いは、俺まで縛りつけようとする。
 奇跡なんてそうそう起こらないと俺達は知っているし、どれだけ望んでも叶えられないことなんて腐るほどあった。
「茄子は、もう買わなくていいです」
 ここへ来れなくなってからも、冷蔵庫に茄子を用意してくれていた。とっくに夕飯が終わって何の匂いもしない部屋でも、すぐに食事が出てきた。
 会えなくても変わらない。わざわざ口にしなくても伝わる気持ちが溢れているのに、それでも別れを選ぶ。里長になる俺と周囲を慮って。
 その根っこにある気持ちをちゃんと分かっている。あなたは、俺にも同じ思いがあると信じきることができるだろうか。
「茄子は俺が持ってきます。次に来る時……ちょっとかかるとは思うけど、いつか」
 泣きそうな顔で笑われて、口元が緩む。次にその顔を見られるのはいつになるのか。俺自身にも分からない。それでも諦めることはできない。
 優しい約束をあげられなくてごめんね。奇跡なんて待たなくて良いよ、先生。俺をただ、愛し続けて。



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2022/11/10
2023/02/15(水) 15:21 短い物 COMMENT(0)
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