◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
無謀な賭けではないんですよ。ほら、何となく分かるでしょ。なんとなーく、あ、この人俺のこと好きかなってヤツ。ふとした時に目が合ったり、ちらっと見えた目尻が下がってるなとか、偶然会った時にパッと。分かります?こうパッと、あ、ごめんなさい。拭きます拭きます。こうパッと、そうそう。雲が晴れたような……お日様に愛されてる感?が伝わる明るさ。え、難しいです?うーん。違います違います、そこまでは明るくない。洞窟から外へ出るってかなり差があるでしょう?もっと小さいの。あ、それですそれ。こうね、直に熱燗の徳利を持ってるヤマトさんの手と、そのヤマトさんの手を包む俺の手。ぐらいの差。分かりにくいです?うーん……え?はい。一回じゃないです。だから自惚れじゃないと思うんですよ。ていうかねえ!男があのバレンタインコーナーとやらに一人で乗り込むんですよ?生半可な覚悟じゃ無理ですよ。なんとなく、うっすらだけど、絶対確かだって思うから、あの中に飛び込めたんじゃないですか。まあ、最初は尻込みしたんですけど、「バレンタインは恋する人の味方だから!」って言われて。そうなんですよお~。良い子たちでしょう?先生頑張って!って背中を押されたら行くっきゃない!あ、ありがとうございます。ほとんど空だったんで大丈夫大丈夫。あ、お代わりは同じで。はい。いただきます。
ようやく口を塞ぐことに成功した。杯を傾ける勢いに不安は残るが、このまま勢いを落とせないかとメニューを引き寄せる。
陽の落ちかけた里で肩を落としトボトボと歩くイルカ先生を見つけた。任務帰りで腹が減っていたこともあり、飲み屋に誘ったら大人しくついてきた。さぞかし落ち込むことがあったのだろうかと水を向けてみれば、まるで切っ掛けを待っていたかのように口が動き続ける。
想定外だったのは、吐き出されたのが仕事の愚痴ではなく彼の恋の話だったことだ。まさかこんな話を聞くことになるとは思わなかった。
「でね、ヤマトさん」
「はい」
「俺、今日一日ずーっとドキドキしてたんですよ。任務無しで待機って分かったから、仕事が上がったら飛んでって掴まえようって思って、ずーっとずううううーっと」
「それは一日長かったですね」
「そうなんです。それを耐えて耐えてようやっと待機室に向かったら」
ゴンと鈍い音が響く。カウンターへ落ちた頭の勢いに、天辺で括られた髪がゆらゆら揺れ
ている。手を伸ばしかけて、撫でるべきは頭が尻尾かどちらか迷った。
「任務、ですって。緊急の。任務。今日は帰るか分からないって」
「あー。残念でしたね。次の機会を待つしか」
「分かってるんですよお。しゃあない。これはしゃあないやつ!って。でも俺、なんとなくから漂う微かなもしかしたらを掻き集めて、勇気を奮い立たせたんですよ。ハッキリ表してくれないってことは、雰囲気を楽しんでるだけで何も望んで無いかもしれないじゃないですか。いざ告白して、そんなつもりは……とか言われたら立ち直れねえ。せめてバレンタインなら、チョコに引っかけて冗談でした~に出来るかもなって。言い訳いっぱい用意して頑張った俺は、もうどっか行っちゃいそうで」
ぐすぐすと鼻を鳴らす姿に迷っていた手の位置が下がった。時折震える背中を擦ってあげようと手を伸ばす。
「あれ?」
背後から聞こえた声に突っ伏していた背中が飛び起きた。
「やっぱり先生。お疲れ様」
「カっカカシさんっ!どうして、今日はお戻りになられないかと」
「途中で別隊と合流してね、向こうの方が適任だったから預けてきたの。ラッキーだったなあ」
「そっ、そうですねっ!途中で適任者が見つかるなんて」
「違う違う、そっちじゃなくて」
「え?」
向かい合う二人の視界に僕は入っていないようだ。それを喜ぶべきなのかまだ分からないが、なんとなく気配を消して黙っていた。
「はい。受け取ってもらえる?」
先輩がポーチから出したのは、金色のリボンがかかった真っ赤な小箱だった。手のひらにのる小さなサイズは、中に何が入っているのか紛らわしい。イルカ先生も動揺したようで口をパクパクさせている。
差し出された小箱は宙に浮いたまま。先輩は隠すようにもう片方の手で覆うと、眉を下げて笑った。
「バレンタインだから、チョコを贈ってもいいかなって思ったんだけど……。俺からってのはやっぱり気持ち悪いかな」
「そんなことはありませんっ!お、俺にですよね!?」
「うん。もちろん。あなたに」
被せていた手を外し、小箱を載せた手に重ねる。両手で包み込むようにしてもう一度差し出した。
「任務が入ったし、もうダメかと思ったけど諦められなくて、結局持ったままで。俺からのチョコ……受け取ってくれる?」
照れくさそうに肩をすくめる姿は、初心な男が精一杯の恋心を差し出しているようで……、正直に言うと不気味だ。全くもって似合わない。さり気なく醸し出される威嚇の気配が自分の考えを裏付ける。声をかけるタイミングまで計算した上で演技しているらしい。
硬直しているイルカ先生はまんまと騙されているようで、下ろした手をもう一度あげるべきか悩む所だ。このまま悪夢に誘われて堕ちたとしてもボクとは関係ないけれど、飲み友達ではあるのだし。
「……………………」
「え?先生、何?」
固まっていたイルカ先生は、ゆらりと立ち上がると口の中で何かブツブツと呟いている。微かに聞き取れるのは、「可愛い」だとか「俺の代わりに」だとか、「いじらしい」なんてどこの誰に向けたのか問い質したくなるような単語も漏れてくる。
わざとらしく演技する見るに堪えない先輩と、壊れたように何かを呟く友人を前にしてため息をつく。里の中で小さな子どもでも楽しんでいるイベントだ。なのに大の大人が二人してこんな状態を作り出すとは。もうどうにでもなれと一度下ろした手を上げて、ぽんとイルカ先生の背中を叩いた。ピクリと眉が動いた先輩は、余裕が少し足りない。
「分かった!」
「はい?」
「分かった分かりましたっ!俺が不甲斐ないばかりに申し訳ありませんでした!」
「えと、はい?」
「これからは、俺がしっかりカカシさんをリードしますから。全部俺に任せてください!」
差し出されていたチョコを先輩の両手ごとがっしりと握った。男らしい宣言に、イルカ先生だなあと思うけれど、相手が悪い。あなたの思う通りの人物ならここは涙を溜めて頷くのがせいぜいだろうに、先輩はニッコリと笑ったのだ。
「ありがとう。じゃあ、とりあえずキスしてもらおうかな」
「へ?」
「リードしてくれるんでしょ?これからよろしくね」
秒で猫を脱ぎ捨てて、本性のまま丸かじりしようとしている。そろそろ観客は退散した方が良いだろうと財布を取り出した。彼の健闘を祈って残っていた酒を飲み干す。
イルカ先生、残念だけど折角の決意は完全に逆方向。ヒロイン枠はあなたの方です。
ようやく口を塞ぐことに成功した。杯を傾ける勢いに不安は残るが、このまま勢いを落とせないかとメニューを引き寄せる。
陽の落ちかけた里で肩を落としトボトボと歩くイルカ先生を見つけた。任務帰りで腹が減っていたこともあり、飲み屋に誘ったら大人しくついてきた。さぞかし落ち込むことがあったのだろうかと水を向けてみれば、まるで切っ掛けを待っていたかのように口が動き続ける。
想定外だったのは、吐き出されたのが仕事の愚痴ではなく彼の恋の話だったことだ。まさかこんな話を聞くことになるとは思わなかった。
「でね、ヤマトさん」
「はい」
「俺、今日一日ずーっとドキドキしてたんですよ。任務無しで待機って分かったから、仕事が上がったら飛んでって掴まえようって思って、ずーっとずううううーっと」
「それは一日長かったですね」
「そうなんです。それを耐えて耐えてようやっと待機室に向かったら」
ゴンと鈍い音が響く。カウンターへ落ちた頭の勢いに、天辺で括られた髪がゆらゆら揺れ
ている。手を伸ばしかけて、撫でるべきは頭が尻尾かどちらか迷った。
「任務、ですって。緊急の。任務。今日は帰るか分からないって」
「あー。残念でしたね。次の機会を待つしか」
「分かってるんですよお。しゃあない。これはしゃあないやつ!って。でも俺、なんとなくから漂う微かなもしかしたらを掻き集めて、勇気を奮い立たせたんですよ。ハッキリ表してくれないってことは、雰囲気を楽しんでるだけで何も望んで無いかもしれないじゃないですか。いざ告白して、そんなつもりは……とか言われたら立ち直れねえ。せめてバレンタインなら、チョコに引っかけて冗談でした~に出来るかもなって。言い訳いっぱい用意して頑張った俺は、もうどっか行っちゃいそうで」
ぐすぐすと鼻を鳴らす姿に迷っていた手の位置が下がった。時折震える背中を擦ってあげようと手を伸ばす。
「あれ?」
背後から聞こえた声に突っ伏していた背中が飛び起きた。
「やっぱり先生。お疲れ様」
「カっカカシさんっ!どうして、今日はお戻りになられないかと」
「途中で別隊と合流してね、向こうの方が適任だったから預けてきたの。ラッキーだったなあ」
「そっ、そうですねっ!途中で適任者が見つかるなんて」
「違う違う、そっちじゃなくて」
「え?」
向かい合う二人の視界に僕は入っていないようだ。それを喜ぶべきなのかまだ分からないが、なんとなく気配を消して黙っていた。
「はい。受け取ってもらえる?」
先輩がポーチから出したのは、金色のリボンがかかった真っ赤な小箱だった。手のひらにのる小さなサイズは、中に何が入っているのか紛らわしい。イルカ先生も動揺したようで口をパクパクさせている。
差し出された小箱は宙に浮いたまま。先輩は隠すようにもう片方の手で覆うと、眉を下げて笑った。
「バレンタインだから、チョコを贈ってもいいかなって思ったんだけど……。俺からってのはやっぱり気持ち悪いかな」
「そんなことはありませんっ!お、俺にですよね!?」
「うん。もちろん。あなたに」
被せていた手を外し、小箱を載せた手に重ねる。両手で包み込むようにしてもう一度差し出した。
「任務が入ったし、もうダメかと思ったけど諦められなくて、結局持ったままで。俺からのチョコ……受け取ってくれる?」
照れくさそうに肩をすくめる姿は、初心な男が精一杯の恋心を差し出しているようで……、正直に言うと不気味だ。全くもって似合わない。さり気なく醸し出される威嚇の気配が自分の考えを裏付ける。声をかけるタイミングまで計算した上で演技しているらしい。
硬直しているイルカ先生はまんまと騙されているようで、下ろした手をもう一度あげるべきか悩む所だ。このまま悪夢に誘われて堕ちたとしてもボクとは関係ないけれど、飲み友達ではあるのだし。
「……………………」
「え?先生、何?」
固まっていたイルカ先生は、ゆらりと立ち上がると口の中で何かブツブツと呟いている。微かに聞き取れるのは、「可愛い」だとか「俺の代わりに」だとか、「いじらしい」なんてどこの誰に向けたのか問い質したくなるような単語も漏れてくる。
わざとらしく演技する見るに堪えない先輩と、壊れたように何かを呟く友人を前にしてため息をつく。里の中で小さな子どもでも楽しんでいるイベントだ。なのに大の大人が二人してこんな状態を作り出すとは。もうどうにでもなれと一度下ろした手を上げて、ぽんとイルカ先生の背中を叩いた。ピクリと眉が動いた先輩は、余裕が少し足りない。
「分かった!」
「はい?」
「分かった分かりましたっ!俺が不甲斐ないばかりに申し訳ありませんでした!」
「えと、はい?」
「これからは、俺がしっかりカカシさんをリードしますから。全部俺に任せてください!」
差し出されていたチョコを先輩の両手ごとがっしりと握った。男らしい宣言に、イルカ先生だなあと思うけれど、相手が悪い。あなたの思う通りの人物ならここは涙を溜めて頷くのがせいぜいだろうに、先輩はニッコリと笑ったのだ。
「ありがとう。じゃあ、とりあえずキスしてもらおうかな」
「へ?」
「リードしてくれるんでしょ?これからよろしくね」
秒で猫を脱ぎ捨てて、本性のまま丸かじりしようとしている。そろそろ観客は退散した方が良いだろうと財布を取り出した。彼の健闘を祈って残っていた酒を飲み干す。
イルカ先生、残念だけど折角の決意は完全に逆方向。ヒロイン枠はあなたの方です。
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