◆各種設定ごった煮注意

解説があるものは先にご確認ください

 あー疲れたとカップラーメンの袋を卓袱台に置いてベストを脱ぐ。洗面所で手を洗っていると、水音に混ざってドアを叩く音がした。はいはいと手を拭いて玄関へ向かう。ドアを開けたら両手にいくつもの袋を提げたカカシ先生が立っていた。
「こんばんは」
「こんばんは。どうかされました?」
「以前、食事でもって約束しましたよね。今日はどうですか」
「えっ?あ、あー⋯⋯大丈夫です。じゃあベストを」
「ご迷惑でなければ、先生のお家はいかがでしょうか」
 いかがも何も思いっきり準備してきてるよな。どう見たって断るって選択肢は見当たらねえよな。
 はいか応しか想定してない所に引っかかりはあるが、悪意ではないのだろうと黙って体をずらした。ペコリと頭を下げて、カカシ先生が入ってくる。お邪魔しますの声を置いて、さっさと部屋へ入っていった。

 卓袱台の上に並んだのは牛。それもピンク色に輝くピッカピカの霜降り肉。ご丁寧にすき焼き用、焼き肉用、ステーキ用と各種取り揃えてあった。俺の家の古くさい卓袱台の上が、肉屋のいっとう高いショーケースのようにキラキラしている。少し嵩の減った袋には、それでもまだ食材が入っているようで、葱だの大根だのが突き出ているのが見えた。これは一体何事だ。
「どれからいきますか」
「どれ⋯⋯から?」
「はい」
 どうやら目の前に座る澄ました顔の男は、この卓袱台から落ちんばかりの大量の肉を俺に食えと言っているらしい。
 そうか、なるほど。うんうんと頷いて、オンに切り替えた。プライベートは一旦置いといて、仕事モードで応対しよう。世の中には、自分の頭の中を言葉にしなくても相手に伝わるのだと思い込んでいる者がいる。受付でもアカデミーでもこういう場面はよくあって、対処は慣れてる方だ。きちんと説明しろと詰め寄るのはよくない。相手はちゃんと伝えているつもりなのだ。手がかりは並んでいるので、とにかく一つずつ。
「たくさん買いましたね。誰も呼ばないで二人で食べても良いんですか」
「はい。その為に買ったので」
「力カシ先生はどれを食べたいんですか」
「どれも。あなたの好きそうなものを選んだだけだから」
 カカシ先生は手土産に食材を選ぼうとしたが、俺の好みが分からず一通り買ったようだ。上忍の財布ならこれくらい屁でもないのかもしれない。中忍には到底真似できないが。

 謎は解けたと言いたい所だが、やっぱりよく分からん。どれだけ財布が分厚くても、こんなことするもんだろうか。上忍の知り合いは他にもいるけれど、ここまで極端な人は初めてだ。どの肉も、それぞれたっぷり五人前くらいある。つまり今、卓袱台の上には約十五人前の牛肉が乗っているのこれはいくらなんでもやり過ぎだし、正直怖い。
 俺達は食事の約束をしただけで、仕事以外で会うのはこれが初めてなのに。
「すき焼きも焼き肉もステーキも好きですよ。でも量が多い気がしますね」
「今年は丑年なんです」
「そうですね」
「千支のものを持つのは縁起が良いらしいですよ」
 いや持つっていうか食うんだろ。それ逆に縁起悪くねえのか?
 話すほどに訳がわからなくなる。今まで知り合ったどのタイプとも違う人だ。参ったなーと内心頭を抱えた。
「たくさん食べてください。きっと良い年になりますよ。縁起ものを食べて今年一年、幸せに暮らしましょう。俺もたっぷり頂くので」
「まあ、確かにたくさんありますけど⋯⋯」
 売るほどあるわなとすき焼きのパックを一つ持ち上げたが、カカシ先生は少し首を傾けてニコリと笑った。
「うん。すっごく美味しそう」
 嬉しそうに細めた視線の先は、予想よりもだいぶ上。真っ直ぐに見つめられて、瞬間、閃いた。
 食べられるのは俺ですか?



2021/01/03
2021/08/29(日) 02:18 ワンライ COMMENT(0)
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