◆各種設定ごった煮注意

解説があるものは先にご確認ください
 さわさわと顎をくすぐる感触に目が覚めた。胸元に顔を埋めた先生が、もぞもぞと掛け布団へ潜り込もうとしている。眠っている内にこちら側へ巻き込んでしまったようで、背中の端っこがはみ出ているらしい。体を抱き寄せてすっぼり布団を被せたら満足したように身動ぎが止まった。穏やかな寝息の邪魔をしないようにそっと手を伸ばす。ついでに足も。軽く握られた手のひらと足の裏で触れた爪先は、ぬくぬくとした熱を持っていて力が抜けた。

 恋人と過ごす年越しなんて初めてで、正直俺も浮かれていた。先生が言うあれやこれやに全て頷いて、気づいた時にはやることが山積み。炬燵の上のみかんは切らしちゃいけないとか、大晦日の風呂は早目に入るとか、それは単に先生の気分だよね?って思うことにも頷きながら、カーテンの洗濯をしたりした。頑張ったご褒美に美味しいものをたくさん買って、のんびりしようねーって笑ってたらいつものパターンで、まあそれはしようがないしと里を発つ。未練はあったけど、仕事は別の話。全力で片付けて帰ってきたら、門の前に仁王立ちしてる人がいた。
「いっぱい買いました。一人は淋しかったけど、ちゃんとやりました!」
 赤いを通り越して白くなった鼻と肩に積もる雪が、長い間待っていたと伝えるので何も言えなくなった。黙ったままの俺へ突き出された袋には、たくさんの食料。約束を破ったのだから、腹が立つだろう。でも遊んできた訳じゃない。こんなことは一度じゃすまない。きっと何度でも繰り返すはずだ。
 ごめんねと謝るべきか、忍としての立場を理解させるべきか。悩みながら袋へと伸ばした手が触れた指先は、氷のように冷たかった。袋ごと手を包み込むと、欠片も浮かんでいなかった言葉がするりと出てくる。
「俺も淋しかった。本当は一緒にしたかった」
 先生はうん、とひとつ頷くときゅっと手を握り返してくれたので、俺達は手を繋いで家へ帰った。
 熱い風呂と念願の年越し蕎麦と、新年の乾杯をして布団に潜り込む。電気を消した暗闇の中で、先生が神妙な声を出した。
「大人だけど、淋しいって言います。先生だけど、次は無いかもって言います。次に出来たら嬉しいけど、それは今したかったのとは別物だから、今が欲しいって言います。だけど、無理なのはちゃんと分かってます。あなたはどっちがいいですか」
 付き合ってから初めて聞く声だった。明るくておおらかで、包み込むような温かさを持つイルカ先生。大人同士の付き合いは遠慮がちで分別臭くて、無理も我が儘もほとんど無い。ただ、自分以外の温もりが側にあることへ浮かれていた。
 昨日見た彼は、きっと本当の彼だ。淋しいと言って、雪の中で待ち続けるような無茶をする。初めて見た、今まで知らなかった先生。
「先生のことが好きだよ。淋しいって言うあなたも欲しい。全部くださいって言ったらどうしますか」
 質問に質問で返すのはルール違反だ。分かっていても、聞いてみたかった。返事の代わりに隣で寝ていた体が動く。するりと胸元へ入り込んで背中へ回った手に抱き寄せられた。



 湯気が上がるお椀の中には三つ葉と鶏肉、なると。後はこんがり焼き目のついた餅が二つ。改めて新年の挨拶をして箸を取る。
「年越し蕎麦はカカシ風にしたので、お雑煮はうみの家の味です」
「ん、美味しいね」
 にこりと笑う顔の間に温かい日常の香り。新しい日々の始まりを彼と一緒に。
「餅追加します?」
 炬燵に足を突っ込んだまま、体を捻って餅の袋を引き寄せている。ぴょこぴよこ跳ねる尻尾を見ながらもちろんと答えた。



2021/01/02
2021/08/29(日) 02:18 ワンライ COMMENT(0)
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