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◇意味ありげ

 珍しくて。本当に、今までなかった気がするくらい、珍しくて。声をかけるのはいつも俺で、先生には付き合ってもらうばかり。だから、先生から「飲みに行きましょう」って言われて本当に嬉しかったんだけど。
「カカシさあ~ん」
「はい」
「どこえす?」
「下。先生の下です」
「あえ」
 ぐっと太股に足をかけられたと思ったら、目の前に逆さまになった先生の顔が降ってきた。
「ほぉんとおらあ~」
「ちょっ、人の足を踏み台にしないで!さすがに痛いですって」
「あい」
 すとんと組んだ俺の手の上に尻を落とし、ぺたあっと背中に張り付いてきた。それはそれで、今度は心臓が破裂しそうなのだが。
 ばくばくなる心臓が、背中に張り付いた先生に聞こえてしまいそうで落ち着かない。いっそ瞬身してアパートまで連れ返った方が、お互いの為だったりして。
 少しでも早くと進める足は、なかなか速度が変わらなかった。逃げ出したいけど動きたくない。本当は大事なこの人をずっと背中の上に載せて、その温もりを感じていたいのだ。たとえ俺の顔を見てくれなくても、布団の代わりと思って寝てくれても構わない。それだけでいいと思うくらい、先生のことが好きだった。彼の頬が当たる首筋が、火傷しそうなくらい熱く感じるほどに。
「カァシさ~ん」
「はーい」
「どこー」
「下ですよ。あなたのお尻を支えてるのは、なんと俺の両手です」
「ん~?」
「ごめん俺が悪かった!覗き込もうとすると危ないからやめて!」
「ん~」
 大きく左に傾けた体を戻し、またぽすんと背中にもたれ掛かった。とん、とゆっくり一歩進む間に心臓が二つ跳ねる。また一歩足を踏み出せば、どくどくと心臓が二つ。紛れるようにして小さな音がとくんと鳴って、俺と先生の胸の音が混ざり合う。
「カーシさん」
「はい」
「こえがいい」
「はい?」
「おれ、ずーっとずうううとこえがいいです。こえ」
 胸の前に垂らしていた腕がぎゅっと首に巻き付いた。止まった足の代わりに心臓が倍の速さで動き出す。
「こうしてていいえすか?カァシさん」
「……」
「ねぇ」
「……」
「ねぇ」
 何度か転がり落ちた響きは寝息に代わり、俺の背中に吸い込まれていった。爆発しそうな心臓を抱えて、また一歩ずつゆっくりと歩き出す。ふわついた足がこのまま地面にめり込んでいっても、背中の人だけは絶対に放さないと思いながら。
2021/10/11(月) 16:32 お題もの COMMENT(0)
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