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 どれだけ離れていても、髪を見れば誰だか分かる。茜色を弾く銀色は夕陽を浴びる校庭の何よりも美しかった。走り出しそうになる足を、深呼吸と共にゆっくりと踏み出す。
 あそこに立っているからといって俺を待っているとは限らない。第一、今日は何の約束もしていなかった。ちょっと間が開いたので、もうおしまいかと思っていたくらいだ。個人的に会うのは、温かい背中に揺られたあの夜以来。酔いにまかせて吐き出した思いは偽りのない本心だったけれど、彼にとっては迷惑だったのだろう。
 だが疼く足と呼び合うように逸る心臓は、そんなはずないとやかましく主張する。今まで見てきたカカシさんを思い出せばその通りだと頷きたくもなるけれど、結局それは俺の勝手な思い込みにすぎないかもしれないのだ。心の内を知るのは自分だけ。見せてもらえるまでは、笑っていつも通りにやり過ごす他は無い。ただの友人のように。何も覚えていないように。簡単な事だ。

 俺へと据えた視線は動かない。俺を待っていると分かったので、少し距離がある場所で立ち止まった。これ以上近づいたら心臓の音が聞こえてしまいそうだ。
「カカシさん?約束してましたっけ」
 木に預けていた背が起き上がり真っ直ぐにこちらを向く。それなりに親しい仲であるはずなのに、まるで出会った頃に戻ったような距離だ。彼の足を止めさせたのも、間にある壁も俺が作った。後悔はしていない。カカシさんへの気持ちをもう止められなかったのだ。背中の温もりと支えてくれた手は嘘じゃないと思う。でも、その気持ちの形を見誤った。それに関しては胸が千切れそうなほど痛い。
「先生に、言いたい事があるので聞いて頂けますか」
「?はい」
「あなたのことが、好きです。俺と付き合ってもらえませんか」
 とぼけたフリで構えていた体から全て吹き飛んだ。飛んできたのはぶつけられると思っていた言葉とは真逆の告白で、耳を疑う。静かな響きと熱い視線が覚悟していた体を溶かしてゆき、堰き止めていた全てが溢れてしまいそうだ。間違っていなかったと安堵する体を預けてしまいたいのに、カカシさんとは距離がある。
「返事をしたいのですが」
「お願いします」
「じゃあ、もっとこっちへ来てもらえませんか。俺の言葉が風に飛ばされない距離まで近づいてください」
 眉間に浮かんだ皺を見て笑みが浮かぶ。そうではないと証明するから、もっと俺の傍に来てほしい。
「カカシさん、もっと近くへ。ねぇ」
 ぎこちなく近づく人へ笑いかける。風に吹かれる銀髪の、夕陽を照り返す色が見えるくらいまでもっと近くへ。
「俺も、あなたの事が好きです。いつもこのくらい傍にいて」
 カカシさんの手を取り指先の熱を伝えた。言葉と体、俺の全てがあなたの言葉に喜んでいる。握り返す指の冷たさに驚くけれど、込められた力は強かった。
「ありがとう」
「反対の言葉を想像してました。避けられてるみたいだったから」
「……どうしても諦めきれなくて。あの夜の呟きが俺の思う意味じゃなかったら、告白した後に笑い合うことが出来なくなるかもしれない。あなたを失うのが怖かった」
 臆病で、と笑う顔に泣き顔が重なる。酔いに揺れる頭が、もうおしまいかもしれないと涙を流させた。あの夜の俺の顔だ。
「それでも欲しかった?それでも、どうしても?」
「うん」
 握っていた手を引かれて蹈鞴を踏む。止まるなというように背中から抱き寄せられた。
「ねぇ先生、ずっとこうしたかった。ずっと、思ってたよ」
 閉じ込められた腕の中で、心臓の音を聞く。二つの音が重なるように背中へ腕を回した。
2021/10/16(土) 13:39 お題もの COMMENT(0)
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