◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
別れた後に友達に戻るパターンもあるらしい。生憎そっち方面の経験は乏しくて、そういうのもあるのかあと思ったけれど、ちょっと待て。自分に当て嵌めると腑に落ちない。ニッコリ笑って友達に戻りましょうってのが、(俺的には分からないけど)世間的にありとしても、空白の一ヶ月は何だったんだ。ひと月も悩み続けるくらいなら、あえて友達に戻る必要なんかないだろう。気持ちの整理に時間がかかったと言っても、それはこちらも同じこと。やっと気持ちに句区切りをつけたところで唐突に現れても、今さら何だ以外の台詞は出てこない。ふざけんなの一言でぶん殴られるのがいいところだと思うのだが、カカシさんはそう考えなかったのだろうか。
浮かんだ疑問は秒で消えた。きっと考えなかったんだろうなあ。じゃなきゃ、ああはならん。カウンターから笑顔でひらひらと手を振る人に、ペコリと頭を下げる。わりぃけど、ニッコリ笑うにはあと何秒か必要だ。大丈夫、隣の席に座るまでにはちゃんとカカシさんの好きだったイルカ先生になってる。俺だって大人だし。
ビールは乾杯の一杯だけ。すぐにお目当ての酒に切り替えて、ついでに前々から気になっていた酒も試す。友人同士のゆるゆるとした酒宴は、当たり障りのない話を連ねてどうにか場をもたせた。カカシさんが変わらないなら俺も変われない。一緒に飲もうと誘われたのは恋人だった俺なのだから、違う俺になってしまったらこの場所まで失ってしまう。それはだいぶイヤだ。少々の恨み言やぼこぼこ涌き出る疑問はひとまず置いて、今日の出来事を面白おかしく話しつつ、ちらちら顔色を窺った。もし別れた後の俺の様子を確認するだけだとしたら、これが最後のデートになる。カカシさんは優しいから最後の機会をくれたのかな、いや意図は分からんから油断はいかんぞと、頭の中が騒がしい。雑音を減らすために上からすっぽりと被せられている布には、やっぱり嬉しいとでっかく書かれていた。告白をしてきたのも過剰な愛情表現も全部カカシさんの方で、俺は受けとるばかり。好きじゃないから受動的だったわけじゃないし、未だに思考がぐるぐるするくらい大切な人だ。どうしようもない自分の気持ちを知っている。ひょっとしたらという思いを捨てるのは難しいけれど、もしも届くのなら。そう願って笑顔を浮かべた。
ほどよく飲んでそこそこ食べて、きっちり割り勘して店を出た。美味しかったですねと笑い合い、じゃあまたと別れる。お互い背を向けて歩き出した所で、思い切り顰め面を作った。これは何なんだ。またがあるなら最後の晩餐じゃなくて友達付き合い? この関係でゆくのなら、彼の中で俺の居場所が変わったと思って良いのだろうか。分からないなりに考えてみたけれど、全部無駄だった。彼の目を見たら、どれも正しいとは思えなくなる。
カカシさんはふらりと現れて一緒に飲もうと誘って来る。良いですよと答えて過ごす時間は、以前と変わらない空気だった。それだけなら友達と思えたのに、ふと交差する彼の視線がそうと思わせてくれない。俺を見つめる目が、前と一緒で混乱する。蕩けるような声で好きだよと言っていた時と同じ目をするのだ。混乱した俺はただ、笑う。時間が過ぎるのを待ちながら笑顔を浮かべるんだ。
何回かあった誘いでは、いつもそうやってやり過ごした。ただ、それって何も産まない。進まないし変わらない。俺達は微妙な関係のまま宙ぶらりんだ。
「友達に戻ったんだろ?」ってどこかが言う。「友達だった時から好きだったらしいよ」って聞こえると加勢をするように、「まだ俺を好きなんだよ。あの目を思い出せ!」ってどこかが叫ぶ。だけどと呟く声に被せるように、俺だってそうだよ! って泣き声が破裂する。頭の中がわんわんと鳴り響いて、ぐっちゃぐちゃだ。収拾がつかなくなる頃、そうだね、でもどうする? っていう小さな声が聞こえて音が止む。どうする? って言われても分からない。だって俺はカカシさんになんで? って聞けない。理由が分からなきゃ対策の立てようがないのは嫌になるほど分かっていて、だから笑顔になって覆い隠す。追求してしまったら、あの人が逃げてしまう気がする。もう絶対に戻ってこない気がするから、笑う。これは俺の秘密。俺だってカカシさんに教えてやるもんか。彼の隣へ座るために、背中を向けて息を吸う。大丈夫、笑顔は作れる。呼吸は一人になってから。
コトンとカウンターに置かれた瓶には、うっすらと黄味がかった酒が入っている。傾けると、ちゃぷんと揺れた水面がゆっくりと流れた。
「少しだけとろみがあるそうです。飲みたがってたでしょ」
「ありがとうございます」
「いーえ」
じゃ、と背中を向けて去って行く。お土産の酒瓶をそっと持ち上げた。
「なあ」
「ん?」
「お前に土産渡すなら、何で俺に報告書出したんだ?」
「……お前の方が優秀だから?」
「ちょっ、何だよお前ー! 照れるじゃーん!」
「真に受けるなよー!」
「おい」
「悪い」
んふふと笑って酒瓶を眺める。
「お前今日暇?」
「おう」
「これ一緒に飲もっか」
「いいのかよ。飲むんならはたけ上忍とだろ。わざわざ買ってきてくれたんだぞ」
「……だよな」
「だよ」
うんうんと頷き合ってまた前を向く。俺と違って里外へ出ることの多いカカシさんは、よく土産を買ってきてくれた。おかえりなさいをした後にリュックから出てくる物は、任務先によって変化する。風呂好きな俺へ選んでくれた温泉の素、名産品の珍しい肴。一番多いのはやっぱり酒で、重い酒瓶を運んでくるのを申し訳なく思った時もある。でも疲れてるはずのカカシさんが、嬉しそうに笑うんだ。会えないのは淋しいけど、再会後の楽しみが大きくなるからそう悪いもんじゃないね、って笑顔を浮かべて渡される。
イケメンは言動までイケメンで、凡人の俺は気の抜けた相槌しか返せなかった。注ぎやすいでしょとか言ってわざわざ真横に座るから、くっつき合って飲んだのを覚えてる。この酒を注いでくれる人はもういないんだけど、俺は一人で飲めば良いのかな。ぼーっと前を向いていたら、いつの間にか終業時刻になっていた。お疲れと言いながら酒瓶を手に受付を出る。
どうしよう。腹は減ってるし、ツマミを買って帰ろうか。
商店街へ足を向けて、肩に食い込む紐の位置を変えた。瓶を入れているのでちょっと重い。こうやって土産をもらうのは久しぶりだ。最後に飲んだのは、と思い出して足を止める。土産の酒はいつも二人で飲んだ。カカシさんにもらった酒を一人で飲むのは、これが初めて。
「……一楽にすっか」
再会後なんてのがあるのかは分からないけど、楽しみは大きい方が嬉しいし。淋しい間は寝ててくれ。ぽんぽんと鞄の上から軽く叩いて、また歩き出した。
浮かんだ疑問は秒で消えた。きっと考えなかったんだろうなあ。じゃなきゃ、ああはならん。カウンターから笑顔でひらひらと手を振る人に、ペコリと頭を下げる。わりぃけど、ニッコリ笑うにはあと何秒か必要だ。大丈夫、隣の席に座るまでにはちゃんとカカシさんの好きだったイルカ先生になってる。俺だって大人だし。
ビールは乾杯の一杯だけ。すぐにお目当ての酒に切り替えて、ついでに前々から気になっていた酒も試す。友人同士のゆるゆるとした酒宴は、当たり障りのない話を連ねてどうにか場をもたせた。カカシさんが変わらないなら俺も変われない。一緒に飲もうと誘われたのは恋人だった俺なのだから、違う俺になってしまったらこの場所まで失ってしまう。それはだいぶイヤだ。少々の恨み言やぼこぼこ涌き出る疑問はひとまず置いて、今日の出来事を面白おかしく話しつつ、ちらちら顔色を窺った。もし別れた後の俺の様子を確認するだけだとしたら、これが最後のデートになる。カカシさんは優しいから最後の機会をくれたのかな、いや意図は分からんから油断はいかんぞと、頭の中が騒がしい。雑音を減らすために上からすっぽりと被せられている布には、やっぱり嬉しいとでっかく書かれていた。告白をしてきたのも過剰な愛情表現も全部カカシさんの方で、俺は受けとるばかり。好きじゃないから受動的だったわけじゃないし、未だに思考がぐるぐるするくらい大切な人だ。どうしようもない自分の気持ちを知っている。ひょっとしたらという思いを捨てるのは難しいけれど、もしも届くのなら。そう願って笑顔を浮かべた。
ほどよく飲んでそこそこ食べて、きっちり割り勘して店を出た。美味しかったですねと笑い合い、じゃあまたと別れる。お互い背を向けて歩き出した所で、思い切り顰め面を作った。これは何なんだ。またがあるなら最後の晩餐じゃなくて友達付き合い? この関係でゆくのなら、彼の中で俺の居場所が変わったと思って良いのだろうか。分からないなりに考えてみたけれど、全部無駄だった。彼の目を見たら、どれも正しいとは思えなくなる。
カカシさんはふらりと現れて一緒に飲もうと誘って来る。良いですよと答えて過ごす時間は、以前と変わらない空気だった。それだけなら友達と思えたのに、ふと交差する彼の視線がそうと思わせてくれない。俺を見つめる目が、前と一緒で混乱する。蕩けるような声で好きだよと言っていた時と同じ目をするのだ。混乱した俺はただ、笑う。時間が過ぎるのを待ちながら笑顔を浮かべるんだ。
何回かあった誘いでは、いつもそうやってやり過ごした。ただ、それって何も産まない。進まないし変わらない。俺達は微妙な関係のまま宙ぶらりんだ。
「友達に戻ったんだろ?」ってどこかが言う。「友達だった時から好きだったらしいよ」って聞こえると加勢をするように、「まだ俺を好きなんだよ。あの目を思い出せ!」ってどこかが叫ぶ。だけどと呟く声に被せるように、俺だってそうだよ! って泣き声が破裂する。頭の中がわんわんと鳴り響いて、ぐっちゃぐちゃだ。収拾がつかなくなる頃、そうだね、でもどうする? っていう小さな声が聞こえて音が止む。どうする? って言われても分からない。だって俺はカカシさんになんで? って聞けない。理由が分からなきゃ対策の立てようがないのは嫌になるほど分かっていて、だから笑顔になって覆い隠す。追求してしまったら、あの人が逃げてしまう気がする。もう絶対に戻ってこない気がするから、笑う。これは俺の秘密。俺だってカカシさんに教えてやるもんか。彼の隣へ座るために、背中を向けて息を吸う。大丈夫、笑顔は作れる。呼吸は一人になってから。
コトンとカウンターに置かれた瓶には、うっすらと黄味がかった酒が入っている。傾けると、ちゃぷんと揺れた水面がゆっくりと流れた。
「少しだけとろみがあるそうです。飲みたがってたでしょ」
「ありがとうございます」
「いーえ」
じゃ、と背中を向けて去って行く。お土産の酒瓶をそっと持ち上げた。
「なあ」
「ん?」
「お前に土産渡すなら、何で俺に報告書出したんだ?」
「……お前の方が優秀だから?」
「ちょっ、何だよお前ー! 照れるじゃーん!」
「真に受けるなよー!」
「おい」
「悪い」
んふふと笑って酒瓶を眺める。
「お前今日暇?」
「おう」
「これ一緒に飲もっか」
「いいのかよ。飲むんならはたけ上忍とだろ。わざわざ買ってきてくれたんだぞ」
「……だよな」
「だよ」
うんうんと頷き合ってまた前を向く。俺と違って里外へ出ることの多いカカシさんは、よく土産を買ってきてくれた。おかえりなさいをした後にリュックから出てくる物は、任務先によって変化する。風呂好きな俺へ選んでくれた温泉の素、名産品の珍しい肴。一番多いのはやっぱり酒で、重い酒瓶を運んでくるのを申し訳なく思った時もある。でも疲れてるはずのカカシさんが、嬉しそうに笑うんだ。会えないのは淋しいけど、再会後の楽しみが大きくなるからそう悪いもんじゃないね、って笑顔を浮かべて渡される。
イケメンは言動までイケメンで、凡人の俺は気の抜けた相槌しか返せなかった。注ぎやすいでしょとか言ってわざわざ真横に座るから、くっつき合って飲んだのを覚えてる。この酒を注いでくれる人はもういないんだけど、俺は一人で飲めば良いのかな。ぼーっと前を向いていたら、いつの間にか終業時刻になっていた。お疲れと言いながら酒瓶を手に受付を出る。
どうしよう。腹は減ってるし、ツマミを買って帰ろうか。
商店街へ足を向けて、肩に食い込む紐の位置を変えた。瓶を入れているのでちょっと重い。こうやって土産をもらうのは久しぶりだ。最後に飲んだのは、と思い出して足を止める。土産の酒はいつも二人で飲んだ。カカシさんにもらった酒を一人で飲むのは、これが初めて。
「……一楽にすっか」
再会後なんてのがあるのかは分からないけど、楽しみは大きい方が嬉しいし。淋しい間は寝ててくれ。ぽんぽんと鞄の上から軽く叩いて、また歩き出した。
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