◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
何回手を挙げたかもう覚えていない。確かスタートはビール……違うな。席に着くなり「焼酎ロック!」って叫んだから止めたんだった。スタートダッシュの勢いそのままに煽り続けるのでさすがの紅も大分酔いが回っているようだ。
「そろそろ話したら?何かあったの」
「別にぃ?」
「アスマとケンカ」
「何でよ。違うわよ」
ぷいと横を向く顔がそうだと答えているようなものだ。いつもふらりと紅の傍に現れる大きな影が今日は見当たらない。
「探しても無駄よ。どっかでお楽しみの真っ最中」
「どういうお楽しみよ。あいつ浮気なんかしないでしょ」
「そうね。ただかわいいくの一に囲まれてお話聞かせてくださあい❤ってやられてただけ。めんどくせえって言いながら引っ張られてっただけ」
ぐーっと開けたグラスをテーブルに置く。少し鈍い音がした。浮気なら止めるし怒ることも出来るが、後輩の相談ですって体を取られたら、見守る以外しようがない。心穏やかではなくとも騒ぎ立てるのは少々筋が違う。分かっていても消化出来ない部分が存分に吐き出されているというわけだ。空になったグラスを取り上げ店員にお変わりを注文してやった。
「あいつ髭熊のわりに面倒見いいからね」
「そうね髭熊のわりに女の子が周回してるから」
「紅も髭熊って思ってるんだ」
「あんたのことは箒みたいって思ってるわよ。掃き心地試してみたいからちょっと逆立ちしてよ」
「すいません、たこわさ追加で」
ご機嫌取りに好物を注文して、まあまあとソーセージの皿を押し出した。フンと鼻息を吹き出し、握った箸を思い切りぶっ刺して大口でかじりとる。見てるだけでひゅんとした。どことは言わないけど。
「イルカは?」
「家だと思うよ。紅と飲んで帰るって言ってあるから」
「ふーん。イルカは何も言わないの?あんたイルカが飲みに行くといつもキリキリして、相手は誰だ!いつ帰るんだ!ついて行く!って騒いでたじゃない。ん?そういえば最近聞かないわね」
「そうでしょ。俺は変わったんですよ」
うんうんと頷いてグラスに口をつける。ついでに出し巻きを一口、と箸を伸ばした先から皿が消える。お行儀悪く赤い爪が直につまみ上げ、大きく開けた口の中へ放り込んだ。
「何誤魔化そうとしてんのよ。にやけ男」
ばれてた。ううんと一つ咳ばらい。この話は何度思い出しても顔がにやけてしまうのだ。聞かせてやりたいけど聞かせるのは勿体ないなあと思ってグラスを揺らしていると、ぱちんと爪で弾かれた。
「一回ね、試したことがあるのよ。一回だけね、一回」
「何を。勿体振らずに言いなさいよ」
「仲間が合コンやるんでどうしても参加してくれって頼まれた。お前がいないと成立しないって言われたんだけど乗り気じゃないし、先生が嫌ならやめとくよって。そしたら笑顔でいってらっしゃい!俺は一楽行くんで気にしないでくださいねって」
「待って。ご飯当番制なの?あんた作ってんの?」
「当番制っていうか俺が作ってるよ。先生放っとくと全然野菜食べなかったりするから。カップラーメン一度に二個食いとかするからね。信じられる?」
「私が悪かった。続き」
「うん。こんなはずじゃなかった何でだって思って、義理を果たしてきたんだけど帰ってもフツーなの。さすがにちょっとくらい嫌な顔されるかなって思ったのに全然、まったく。むしろ締めのラーメンどれにしますかって、カップラーメン並べられたよ」
「嫉妬ゼロね。無だわ。本当に付き合ってんの?」
「失礼なこと言わない!ここからが本番なの!俺もね、先生に嫉妬しないんですか。あなたの知らない人と飲んで盛り上がって遊んできたんですよって言ったら先生が、ほらこれ」
「何。キモい。急に頬染めて鼻かくのやめてよ。怖い怖い」
わざとらしく両腕を摩り始めた。それは失礼じゃないかと思って眉が上がるが、知ったことかとイヤイヤされてへにゃりと下がる。
「知らない?これ先生の癖。すんごく可愛いと思うんだけど」
「あんた俺の思う先生の可愛い仕草ベスト10とか言い始めたらたこわさ鼻に突っ込むわよ」
「分かった。言わないから箸置いて。いや置いてよ。そう、そのまま置いといて。でね、先生がこうやって」
「やめて」
「俺はあんたを一番好きで、あんたも俺を一番好きでしょう?気にすることなんてあります?って」
「……」
「そっかって。そうだなって思って、だから、うん」
「イルカ言うわねー。案外あんたみたいな優男よりああいうタイプの方が殺し文句言ったりするのかしら」
「お前知らないの。先生優しいし可愛いし格好いいし完璧よ?堅実で、実は貯金もしっかりしててまあまあ財力もある」
「へースーパーダーリンってやつ」
「誰の話だ」
ぬっと表れた大きな影が不愉快そうな声を投げる。テーブルの上と彼女の顔を見て、ポケットに突っ込んでいた手を出した。紅の腕を取る。
「だいぶ飲んだな。帰るぞ」
「何よ。お楽しみだったんじゃないの」
「切り上げたから迎えに来たんだろうが。行くぞ」
酒とは違う朱が紅の頬に差す。アスマの腕に引かれて大人しく立ち上がった。もう酒は必要ない。
「しかしお前もそういうこと言うのね」
「何の話だ」
「気にしなくていいの。カカシも帰るの?」
「うん。お土産にアイス買って帰る。俺はスーパーダーリンのスーパーダーリンだから」
パチンとウインクを決めて俺も席を立つ。早くイルカ先生に会いたい。
「格好つけたつもりか」
「片目隠してウインクってただ目をつむってる人よ」
薄情なカップルに頬が引き攣る。もう知らんとアスマに伝票を押し付けた。
2021/05/09
「そろそろ話したら?何かあったの」
「別にぃ?」
「アスマとケンカ」
「何でよ。違うわよ」
ぷいと横を向く顔がそうだと答えているようなものだ。いつもふらりと紅の傍に現れる大きな影が今日は見当たらない。
「探しても無駄よ。どっかでお楽しみの真っ最中」
「どういうお楽しみよ。あいつ浮気なんかしないでしょ」
「そうね。ただかわいいくの一に囲まれてお話聞かせてくださあい❤ってやられてただけ。めんどくせえって言いながら引っ張られてっただけ」
ぐーっと開けたグラスをテーブルに置く。少し鈍い音がした。浮気なら止めるし怒ることも出来るが、後輩の相談ですって体を取られたら、見守る以外しようがない。心穏やかではなくとも騒ぎ立てるのは少々筋が違う。分かっていても消化出来ない部分が存分に吐き出されているというわけだ。空になったグラスを取り上げ店員にお変わりを注文してやった。
「あいつ髭熊のわりに面倒見いいからね」
「そうね髭熊のわりに女の子が周回してるから」
「紅も髭熊って思ってるんだ」
「あんたのことは箒みたいって思ってるわよ。掃き心地試してみたいからちょっと逆立ちしてよ」
「すいません、たこわさ追加で」
ご機嫌取りに好物を注文して、まあまあとソーセージの皿を押し出した。フンと鼻息を吹き出し、握った箸を思い切りぶっ刺して大口でかじりとる。見てるだけでひゅんとした。どことは言わないけど。
「イルカは?」
「家だと思うよ。紅と飲んで帰るって言ってあるから」
「ふーん。イルカは何も言わないの?あんたイルカが飲みに行くといつもキリキリして、相手は誰だ!いつ帰るんだ!ついて行く!って騒いでたじゃない。ん?そういえば最近聞かないわね」
「そうでしょ。俺は変わったんですよ」
うんうんと頷いてグラスに口をつける。ついでに出し巻きを一口、と箸を伸ばした先から皿が消える。お行儀悪く赤い爪が直につまみ上げ、大きく開けた口の中へ放り込んだ。
「何誤魔化そうとしてんのよ。にやけ男」
ばれてた。ううんと一つ咳ばらい。この話は何度思い出しても顔がにやけてしまうのだ。聞かせてやりたいけど聞かせるのは勿体ないなあと思ってグラスを揺らしていると、ぱちんと爪で弾かれた。
「一回ね、試したことがあるのよ。一回だけね、一回」
「何を。勿体振らずに言いなさいよ」
「仲間が合コンやるんでどうしても参加してくれって頼まれた。お前がいないと成立しないって言われたんだけど乗り気じゃないし、先生が嫌ならやめとくよって。そしたら笑顔でいってらっしゃい!俺は一楽行くんで気にしないでくださいねって」
「待って。ご飯当番制なの?あんた作ってんの?」
「当番制っていうか俺が作ってるよ。先生放っとくと全然野菜食べなかったりするから。カップラーメン一度に二個食いとかするからね。信じられる?」
「私が悪かった。続き」
「うん。こんなはずじゃなかった何でだって思って、義理を果たしてきたんだけど帰ってもフツーなの。さすがにちょっとくらい嫌な顔されるかなって思ったのに全然、まったく。むしろ締めのラーメンどれにしますかって、カップラーメン並べられたよ」
「嫉妬ゼロね。無だわ。本当に付き合ってんの?」
「失礼なこと言わない!ここからが本番なの!俺もね、先生に嫉妬しないんですか。あなたの知らない人と飲んで盛り上がって遊んできたんですよって言ったら先生が、ほらこれ」
「何。キモい。急に頬染めて鼻かくのやめてよ。怖い怖い」
わざとらしく両腕を摩り始めた。それは失礼じゃないかと思って眉が上がるが、知ったことかとイヤイヤされてへにゃりと下がる。
「知らない?これ先生の癖。すんごく可愛いと思うんだけど」
「あんた俺の思う先生の可愛い仕草ベスト10とか言い始めたらたこわさ鼻に突っ込むわよ」
「分かった。言わないから箸置いて。いや置いてよ。そう、そのまま置いといて。でね、先生がこうやって」
「やめて」
「俺はあんたを一番好きで、あんたも俺を一番好きでしょう?気にすることなんてあります?って」
「……」
「そっかって。そうだなって思って、だから、うん」
「イルカ言うわねー。案外あんたみたいな優男よりああいうタイプの方が殺し文句言ったりするのかしら」
「お前知らないの。先生優しいし可愛いし格好いいし完璧よ?堅実で、実は貯金もしっかりしててまあまあ財力もある」
「へースーパーダーリンってやつ」
「誰の話だ」
ぬっと表れた大きな影が不愉快そうな声を投げる。テーブルの上と彼女の顔を見て、ポケットに突っ込んでいた手を出した。紅の腕を取る。
「だいぶ飲んだな。帰るぞ」
「何よ。お楽しみだったんじゃないの」
「切り上げたから迎えに来たんだろうが。行くぞ」
酒とは違う朱が紅の頬に差す。アスマの腕に引かれて大人しく立ち上がった。もう酒は必要ない。
「しかしお前もそういうこと言うのね」
「何の話だ」
「気にしなくていいの。カカシも帰るの?」
「うん。お土産にアイス買って帰る。俺はスーパーダーリンのスーパーダーリンだから」
パチンとウインクを決めて俺も席を立つ。早くイルカ先生に会いたい。
「格好つけたつもりか」
「片目隠してウインクってただ目をつむってる人よ」
薄情なカップルに頬が引き攣る。もう知らんとアスマに伝票を押し付けた。
2021/05/09
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