◆各種設定ごった煮注意
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よってたかって除け者にされている。表現は悪いが、きっとこんな状態だ。多分首謀者は綱手様へ診察を頼んだカカシ様だろう。忍にとってチャクラがどれほど大事なのか、あの人だって嫌になるほど知っているはず。何回もチャクラ切れを起こして歯痒い思いをしてきたのだから、分からないはずなどないのだ。今日お戻りになられたら絶対に問い詰めてやろうと決めて、一人台所で待っていた。けれど、何故だと問い詰めることは出来なかった。何故ならカカシ様がお戻りになった時、俺はぐっすり眠っていたからだ。
――眠い、だるいなんてレベルじゃなく、チャクラに明らかな異変があります。
頭の中で反復し、その度に震える足を必死で押さえる。忍である俺達にとって、チャクラが減るというのは足元が崩れ落ちてゆくような不安を伴う。理由がはっきりしているのなら対処できるだろう。でも一切の自覚がない内に、分身も出せないほど減っていた。チャクラは精神エネルギーと身体エネルギーを変換して作られる。これが尽きるというのは文字通り死を意味するのだ。一刻も早く伝えねばならない。こうしている間にもチャクラは減っているのだ。台所のテーブルの前に座り、じりじりとした思いで時計を睨む。一向に進まない針に息が苦しくなり顔を両手で覆った。緩やかに死へ向かう自分の体を自覚して、平静でいられる人間など多くない。大丈夫だよ先生、と言って笑ってくれないだろうか。あの人がそう言ってくれるなら、この不安だって軽くなるのに。待つ時間が怖くなってテーブルに伏せて耳を押さえた。何も見ず何も聞かない。待っているから早く、一秒でも早く。
不意に感じた冷ややかさに、すっと意識が引き上げられた。ぼんやりとした感覚の中に、一筋だけ凛とした感触が浮き立っている。とろとろとした意識で追いかける内に、流れるような動きは髪を梳いているのだと気づいた。鬢から解けたこぼれ髪が顔にかからぬように梳いている。時折触れる指先がひんやりとして気持ちいい。懐かしいこの指は誰のものだったか。薄らと目を開けると鼠色が目に入って瞬きをした。
「起きた?」
「……カカシさん?」
「ただいま」
ぼーっと見つめていると、ニコリと笑ってポンポンと頭を撫でられた。頭に置かれた大きな手の感触に一気に目が覚める。
「カッカカシ様!お帰りなさいませ!申し訳ありません」
「突然立ち上がったらビックリするじゃない。いいよ。座ってて」
「そういう訳にはまいりません!すぐにお食事を」
「んーでもねえ」
顎に手を当てて壁の時計を見る。つられて見れば、時計の針はもう深夜一時を回っていた。
「こんな時間から食べるのはね。連絡すれば良かった、ごめんね」
「いえ。こんな遅くまでお疲れ様でした。お食事はされたのですか」
「あはは」
「笑って誤魔化すってことは、抜きましたね。おにぎりでも作りますよ。お茶漬けの方が良いですか」
「あーおにぎりがいいな。本当に作ってくれるの」
「ではすぐに」
「ありがとう」
冷蔵庫を開けて昆布の佃煮と鰹節を取り出した。小皿に取った鰹節に醤油を回しがけ軽く混ぜる。塩と、水を張ったボウルに海苔。準備を整えたら炊飯器の前へ移動して、しゃもじでぐっとご飯をよそった。塩をまぶした手の上に落として真ん中に窪みを作る。最初は昆布。包むように丸めたら四回しっかり握って、引っ繰り返してもう四回。皿に移したらボウルに手を浸してもう一度。炊きたての飯ではないけれど、ほんのり手のひらが赤くなっている。
「手、赤いね」
声に振り向くと、テーブルに肘をついたカカシ様がこちらをじっと見ていた。急に恥ずかしくなって手をざぶざぶとゆすぐ。いつもは一人で作っているから、後ろにいらっしゃるのを忘れていた。さっさと作ってしまおうと、景気よく手のひらに塩を振った。
「どうぞ」
「いただきます」
昆布とおかかのおにぎりを一つずつ。何の変哲も無いただのおにぎりを、美味そうに頬張ってくれた。よっぽどお腹が空いてたのかなと思いながら正面で茶を啜る。あっという間に一つ平らげて、お茶を飲んだカカシ様が照れくさそうに笑う。
「とても美味しいです。ありがとう」
「いえ」
「おにぎりって特別だよね」
「昆布とおかか以外入ってませんが」
「そうじゃなくてさ。自分一人だったらわざわざ握らないでしょ。お茶漬けの方が手軽だし、そっちにいっちゃうことも多いな」
「言われてみれば、確かにそうかもしれません。外で食べるなら別ですけど」
「おにぎりは、俺の為にって握ってくれた人がいるんだよね。ボロボロになって帰ってきて、もう玄関で立ち上がる気力もないって時に出してもらったおにぎりは染みたなあ」
「今は里の中でお仕事されてるんですよ。ボロボロになる前に帰ってきてもらえると助かります。おにぎりなら、俺がいつでも作りますから」
「……先生はいつもそう言ってくれるね。その言葉忘れないで。ずっと覚えていてほしい」
「おにぎりですか」
「うん。お願い」
「分かりました」
こくりと頷くと、緩んでいた表情がさらに柔らかくなる。口元を綻ばせたまま、もう一つのおにぎりを持ち上げて口に運ぶ。嬉しそうな顔を見ていたら、開きかけた口を湯飲みで塞ぐことしか出来なくなった。今、あんな話をすることなどできない。それ以上に、心を占める考えで頭がいっぱいになってしまったのだ。
いつもとはどういう意味なのか。忘れないでと願うのは、何を意味しているのか。その先に願う答えがはっきりと浮かび上がり、正面を向いていられなくなった。半分に減った茶の水面を見つめながら、虚しさで心が埋まってゆくのを感じる。日が変わるまで帰りを待っていたのは、震えるほどの恐怖に耐えられなかったからだ。明日まで耐えることなど想像できず、すぐにでも話したいと思って待っていた。一分一秒の間にも生命が削り取られているのではないかと思って、時計すら見たくないとただテーブルへ突っ伏して、それでも頭に思い浮かべていたのは。カカシ様が火影だから、一流の忍だから、自分ですら気づいていなかった状況を知っているようだったから。だからこの人を待っているのだと思っていたけれど、そうではなかった。心を覆っていた不安が薄れていると感じて眩暈がする。
ただ、俺はこの人に助けてと言いたかったのだ。苦しくて怖くて堪らない時に、彼に会いたかった。この顔を見て笑いかけてもらいたいという気持ちの中に、問題の解決なんて含まれていなかった。そんなもの求めていなかったのだ。
「先生、どうかした?」
「おにぎり、美味しいですか」
「うん。美味しいよ」
へにゃりと崩れる顔に笑いかける。あなたがそうやって笑っていられるように。命を取り合う現場から引いたあなたが、里で穏やかに暮らせるように。そう思ってここへ来た。自分が天職だと思っていたほどの仕事を辞めても、その為にここへ来たのだ。
気づいてはいけなかった気持ちは、意識した途端明確な形を持ちその重さを主張し始める。なぜ、いつからと深く奥へと潜ってゆく心は走馬灯のように過去の景色を並べて見せた。その端々にいた彼が、とてもたくさんの場所を占めていると気づき、自分の愚かさに泣きたくなる。
好きだったのか。どうしようもなく、ひたすら気づかぬように押し込めて自分さえも欺きながら、本当は好きだった。二人で過ごすこの夜の時間が、必死で隠していた思いを溢れ出させるほどにその色を濃くしてしまった。あなたに望まれなければ薄れて消えていった思いが、求められたことでしっかりと根付いたのだ。二人だけの時間を養分にして根を広げ、心にぐるぐると巻き付き絡みあいながら鮮やかに花を開かせた。その瞬間に摘み取らなければならないと分かっているのに、何故開いてしまったのか。たとえたった一つでも許されないことがある。どうしてもあなただけは諦めなくちゃいけないのに、どうしてもあなたでなければいけないのだ。痛いほど分かっていても、びくともしない心をただ呆然と見つめるしかない。残り時間が短いから開いたのか、開かせた罰として残り時間が定められたのか、どっちだろう。行き着く先は同じだから、どちらにしても変わらない。
――眠い、だるいなんてレベルじゃなく、チャクラに明らかな異変があります。
頭の中で反復し、その度に震える足を必死で押さえる。忍である俺達にとって、チャクラが減るというのは足元が崩れ落ちてゆくような不安を伴う。理由がはっきりしているのなら対処できるだろう。でも一切の自覚がない内に、分身も出せないほど減っていた。チャクラは精神エネルギーと身体エネルギーを変換して作られる。これが尽きるというのは文字通り死を意味するのだ。一刻も早く伝えねばならない。こうしている間にもチャクラは減っているのだ。台所のテーブルの前に座り、じりじりとした思いで時計を睨む。一向に進まない針に息が苦しくなり顔を両手で覆った。緩やかに死へ向かう自分の体を自覚して、平静でいられる人間など多くない。大丈夫だよ先生、と言って笑ってくれないだろうか。あの人がそう言ってくれるなら、この不安だって軽くなるのに。待つ時間が怖くなってテーブルに伏せて耳を押さえた。何も見ず何も聞かない。待っているから早く、一秒でも早く。
不意に感じた冷ややかさに、すっと意識が引き上げられた。ぼんやりとした感覚の中に、一筋だけ凛とした感触が浮き立っている。とろとろとした意識で追いかける内に、流れるような動きは髪を梳いているのだと気づいた。鬢から解けたこぼれ髪が顔にかからぬように梳いている。時折触れる指先がひんやりとして気持ちいい。懐かしいこの指は誰のものだったか。薄らと目を開けると鼠色が目に入って瞬きをした。
「起きた?」
「……カカシさん?」
「ただいま」
ぼーっと見つめていると、ニコリと笑ってポンポンと頭を撫でられた。頭に置かれた大きな手の感触に一気に目が覚める。
「カッカカシ様!お帰りなさいませ!申し訳ありません」
「突然立ち上がったらビックリするじゃない。いいよ。座ってて」
「そういう訳にはまいりません!すぐにお食事を」
「んーでもねえ」
顎に手を当てて壁の時計を見る。つられて見れば、時計の針はもう深夜一時を回っていた。
「こんな時間から食べるのはね。連絡すれば良かった、ごめんね」
「いえ。こんな遅くまでお疲れ様でした。お食事はされたのですか」
「あはは」
「笑って誤魔化すってことは、抜きましたね。おにぎりでも作りますよ。お茶漬けの方が良いですか」
「あーおにぎりがいいな。本当に作ってくれるの」
「ではすぐに」
「ありがとう」
冷蔵庫を開けて昆布の佃煮と鰹節を取り出した。小皿に取った鰹節に醤油を回しがけ軽く混ぜる。塩と、水を張ったボウルに海苔。準備を整えたら炊飯器の前へ移動して、しゃもじでぐっとご飯をよそった。塩をまぶした手の上に落として真ん中に窪みを作る。最初は昆布。包むように丸めたら四回しっかり握って、引っ繰り返してもう四回。皿に移したらボウルに手を浸してもう一度。炊きたての飯ではないけれど、ほんのり手のひらが赤くなっている。
「手、赤いね」
声に振り向くと、テーブルに肘をついたカカシ様がこちらをじっと見ていた。急に恥ずかしくなって手をざぶざぶとゆすぐ。いつもは一人で作っているから、後ろにいらっしゃるのを忘れていた。さっさと作ってしまおうと、景気よく手のひらに塩を振った。
「どうぞ」
「いただきます」
昆布とおかかのおにぎりを一つずつ。何の変哲も無いただのおにぎりを、美味そうに頬張ってくれた。よっぽどお腹が空いてたのかなと思いながら正面で茶を啜る。あっという間に一つ平らげて、お茶を飲んだカカシ様が照れくさそうに笑う。
「とても美味しいです。ありがとう」
「いえ」
「おにぎりって特別だよね」
「昆布とおかか以外入ってませんが」
「そうじゃなくてさ。自分一人だったらわざわざ握らないでしょ。お茶漬けの方が手軽だし、そっちにいっちゃうことも多いな」
「言われてみれば、確かにそうかもしれません。外で食べるなら別ですけど」
「おにぎりは、俺の為にって握ってくれた人がいるんだよね。ボロボロになって帰ってきて、もう玄関で立ち上がる気力もないって時に出してもらったおにぎりは染みたなあ」
「今は里の中でお仕事されてるんですよ。ボロボロになる前に帰ってきてもらえると助かります。おにぎりなら、俺がいつでも作りますから」
「……先生はいつもそう言ってくれるね。その言葉忘れないで。ずっと覚えていてほしい」
「おにぎりですか」
「うん。お願い」
「分かりました」
こくりと頷くと、緩んでいた表情がさらに柔らかくなる。口元を綻ばせたまま、もう一つのおにぎりを持ち上げて口に運ぶ。嬉しそうな顔を見ていたら、開きかけた口を湯飲みで塞ぐことしか出来なくなった。今、あんな話をすることなどできない。それ以上に、心を占める考えで頭がいっぱいになってしまったのだ。
いつもとはどういう意味なのか。忘れないでと願うのは、何を意味しているのか。その先に願う答えがはっきりと浮かび上がり、正面を向いていられなくなった。半分に減った茶の水面を見つめながら、虚しさで心が埋まってゆくのを感じる。日が変わるまで帰りを待っていたのは、震えるほどの恐怖に耐えられなかったからだ。明日まで耐えることなど想像できず、すぐにでも話したいと思って待っていた。一分一秒の間にも生命が削り取られているのではないかと思って、時計すら見たくないとただテーブルへ突っ伏して、それでも頭に思い浮かべていたのは。カカシ様が火影だから、一流の忍だから、自分ですら気づいていなかった状況を知っているようだったから。だからこの人を待っているのだと思っていたけれど、そうではなかった。心を覆っていた不安が薄れていると感じて眩暈がする。
ただ、俺はこの人に助けてと言いたかったのだ。苦しくて怖くて堪らない時に、彼に会いたかった。この顔を見て笑いかけてもらいたいという気持ちの中に、問題の解決なんて含まれていなかった。そんなもの求めていなかったのだ。
「先生、どうかした?」
「おにぎり、美味しいですか」
「うん。美味しいよ」
へにゃりと崩れる顔に笑いかける。あなたがそうやって笑っていられるように。命を取り合う現場から引いたあなたが、里で穏やかに暮らせるように。そう思ってここへ来た。自分が天職だと思っていたほどの仕事を辞めても、その為にここへ来たのだ。
気づいてはいけなかった気持ちは、意識した途端明確な形を持ちその重さを主張し始める。なぜ、いつからと深く奥へと潜ってゆく心は走馬灯のように過去の景色を並べて見せた。その端々にいた彼が、とてもたくさんの場所を占めていると気づき、自分の愚かさに泣きたくなる。
好きだったのか。どうしようもなく、ひたすら気づかぬように押し込めて自分さえも欺きながら、本当は好きだった。二人で過ごすこの夜の時間が、必死で隠していた思いを溢れ出させるほどにその色を濃くしてしまった。あなたに望まれなければ薄れて消えていった思いが、求められたことでしっかりと根付いたのだ。二人だけの時間を養分にして根を広げ、心にぐるぐると巻き付き絡みあいながら鮮やかに花を開かせた。その瞬間に摘み取らなければならないと分かっているのに、何故開いてしまったのか。たとえたった一つでも許されないことがある。どうしてもあなただけは諦めなくちゃいけないのに、どうしてもあなたでなければいけないのだ。痛いほど分かっていても、びくともしない心をただ呆然と見つめるしかない。残り時間が短いから開いたのか、開かせた罰として残り時間が定められたのか、どっちだろう。行き着く先は同じだから、どちらにしても変わらない。
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