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 カウンターの隅にちょこんと乗っている小さなツリー。和風の大衆居酒屋には場違いでは?と思っているのは俺だけのようで。じーっと見つめていた先生は、人差し指を伸ばして赤い珠をつついている。
「クリスマス⋯⋯」
「そうね。あと三日?」
 はあーっと大きなため息が吐き出される。その日はアカデミーのクリスマス会だと聞いていたが、準備が大変なのだろうか。忙しい中を連れ出して悪かったなと、メニューを開く。せめて先生の好きなもの。
「クリスマス⋯⋯」
「誘ってごめんね。準備まだ終わってなかったんだ。お詫びに何でも追加して」
「準備って。そっちは毎年のことなんで別に。むしろクリスマス会すら無かったら、俺のクリスマス感ゼロですよ。う〜クリスマス⋯⋯」
「打ち上げするんでしょ」
「何言ってんですか!イブに飲み会なんてしたら淋しいでしょうが!家族や恋人がいる仲間はみんな⋯⋯うぅ〜俺も大切な人とクリスマス〜」
 なんだ、そうだったのか。パタンとメニューを閉じてビールを飲み干す。
「この時期じゃもう外は無理かな。どっちの家にする?俺? 先生ん家?」
「え?」
「夜空いたんでしょ。あ、ビールとえーっと⋯⋯トマトの串焼き」
「珍しいもの頼みましたね」
「その顔見てたら食べたくなって」
 赤い顔をした先生が喉をならしてジョッキを空けた。ふぃーっとアルコールくさい息を吹き出して、ぐりんと体をこちらへ向ける。
「あのっ、お、お聞きしておきたいのですがっ」
 はいはいどうぞとカウンターに肘をつき、ついでに口布を下ろしてみた。



2020/12/20
2021/08/29(日) 02:14 ワンライ COMMENT(0)
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