◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
本人に自覚が無く、あからさまな怪我でも無い。どこをどう診られているのか分からないと言えなくもなかったが、大人しくじっとしていた。綱手様の表情は険しく、あまりいい兆候とは思えなかったのもある。屋敷にいる以外は以前と変わらない生活なのだ。影響を受けることもないのに、カカシ様は何を心配して綱手様にお願いしたのだろう。
「眠れているんだな」
「はい」
「疲れやだるさは」
「……ない、と思いますが」
「体が重いことも?」
「はい」
ふむと腕組みをした綱手様がシズネさんに目配せをした。風呂敷を開いて紙袋を取り出し中を確認している。口を閉めて渡された袋の表面には内服薬と書いてあった。薬包が中でカサカサと鳴る。中を覗くと薬包が…………、七つ。
「毎朝忘れずに一包ずつ飲んでくださいね」
「これは何の薬ですか」
「栄養剤みたいなものですよ。夜しっかり寝ているのに昼間眠いというのは、気づかずともお疲れなのだと思います。環境が急に変わった上、ここにはカカシ様の独自の結界が張られていますから。自然と影響を受けているのかもしれません」
「そういうものですか」
「ただの栄養剤だ。深く考えないで飲んでおけ。忘れるなよ」
「はあ。……一週間分しかないということはまた診察を?」
「疲れが取れてなきゃ他の原因を考えなきゃならんだろう。定期的に診る。ここにはシラギクを診にくるからな。ついでだと思っておけ」
「はあ」
「調子が悪かったり、疲れが取れなかったりする時はすぐに連絡してくださいね」
「分かりました」
「何だ」
「俺そんなヤワに見えます?」
「里のヤツらはみんな小童同然だよ」
ふふんと眉を上げる姿にそりゃそうかと頭を下げた。
たいしたこと無いのに大袈裟だなーと思っていたわけだが、綱手様以上に大袈裟な人がいた。いつも十時近くに帰宅するカカシ様が、今日は七時過ぎに戻られたので驚いた。食事を温めるという俺を制し、テーブルに座らせる。向かい側に座って気遣わしげな表情で話し始める。いつもすぐにシラギク様のお部屋へ行かれるのに、どうしたのだろうか。
「先生、今日綱手様がいらっしゃいましたよね」
「はい。あの、良いんですか」
「何?」
「シラギク様は」
「うん。話が終わってからね。まず聞いて」
「はい」
切羽詰まった様子に口を挟めなくなってしまった。額当てを外して髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。何がそれほど気になっているのかさっぱりだ。
「お茶淹れましょうか?」
「いらない。ごめん、ちょっと纏らなくて」
「はあ」
ふうーと大きく息を吐いたカカシ様が天を仰いで目を瞑る。俺は本当にここへ座っていても良いのだろうか。暢気に座っている俺とは対象に、カカシ様はえらく真剣だ。場違いな空気にソワソワし始めた頃、ゆっくりと目を開いたカカシ様が俺を見た。
「綱手様の診察を受けましたね。眠気が取れないと聞きました。他に不調はありますか」
「ないです」
「本当に?」
「ありませんよ。眠気のことだって、オオバさんに言われて初めて思い出したくらいです。不眠なら問題かもしれませんが、夜はちゃんと眠れてるんですよ。だから心配いらないと思うのですが」
「薬を出されたでしょう。見せてください」
薬と言ってよいのかどうか。綱手様自身もただの栄養剤だと言っていた。平気ですよーと受け流すにはカカシ様の目が鋭すぎて、言われたとおり紙袋を差し出す。険しい表情で薬包を開くと、匂いを嗅いだ後小指の先に乗せてペロリと舐めた。そこまで徹底的に確認が必要なんだろうか。俺は一体何を処方されたのだろう。少し怖くなって恐る恐る切り出した。
「それ、おかしいところがあるんですか」
「ああ、ごめんね。大丈夫ただの栄養剤だよ。眠気は疲れのせいだと判断されたんだろうね」
元通り包んで返してくれたが、あんな扱いを受けた後じゃ危険物に見えるじゃないか。ほんの少し眉間に皺を寄せてポーチへしまう。綱手様を疑うわけじゃないけど、カカシ様の態度は変。つい覗うように上目がちになってしまって、胡乱げな視線を向けられた人が吹き出した。自分が原因なのに大笑いとは酷いもんだ。でもこの人、結構こういう所がある。
「ごめん。本当に何もないの。大丈夫だよそれ」
「でも……あれで?」
「うん。あれで」
平気平気とニコニコ笑うので口を閉じる。若干への字になってしまったのは見ないふりをしてもらおう。剣呑な表情は引っ込めたが、話はまだ終わらないらしい。今度こそと立ち上がろうとしたらまだ座ってろと合図された。
「その薬は忘れずに飲んでください」
「分かりました」
「絶対にですよ。本当は毎日俺がチェックしたいくらいなんだから」
「大袈裟じゃありませんか?やっぱりシズネさんの言う通り、結界に関係が?」
「まあここは、元々三代目が張っていた結界の上に俺が重ねがけしてるような状態になってるから。色々と複雑ではありますよ。幾重にも絡み合ってる所があるので」
「オオバさんは大丈夫なんですか」
「彼女は一般人なので、影響はありません。あなたの場合、結界がチャクラに反応してっていうこともあるかもね。何にせよ油断は禁物。どこか少しでも不都合を感じたらすぐに言うように。これは命令と受け取って頂いて構いません」
「命令?」
「はい」
たかがいち中忍の健康状態にどんな問題があるというんだ。わざわざ命令と言うほどの重さがあるとは思えない。三人で俺の知らない何かを隠している。じんじんと疼く後頭部が訴えてくるが、証拠も確信もないのではどうやって訴えればよいのだ。
「先生」
「分かりました」
身の内に生まれた疑問を押し隠して頷いた。きっと教えてはもらえない。
屋根の上に猫がいる。それが?と首を傾げたら、とにかく来てくれと引っ張られた。穏やかな晴れた昼下がりのこと。昼食の後片付けを終えた時だった。
オオバさんに引っ張っられていった先は、物干し竿のある庭だった。ハタハタとはためくシーツやタオルが長閑で平和な風景だ。ただそこに、少しそぐわない鳴き声が聞こえる。みーみーと響く声は弱々しく怯えが混ざっていた。屋根の上でひなたぼっこを楽しんでいるようには聞こえない。泣き声のする辺りを見ても、屋根の庇が邪魔をして確認出来なかった。下からは無理だ。
「カラスが連れてきたみたいなの。ちっちゃくて自分じゃ下りられないみたい」
「俺が連れてきますよ」
たかだか住居の屋根くらい一跳びだ。両足にチャクラを込めて飛び上がる。屋根の上に降り立つ瞬間、体がぐらりと傾ぐのを感じた。片足の踵が屋根の端からはみ出しているのに気づき、慌てて引き寄せた。予定よりも大分手前に下りている。おかしいなと思いながら慎重に歩き、小さな塊の前に膝をついた。真っ白な小さい毛玉がプルプルと震えている。
「もう大丈夫だぞ。ほら」
怖がらせないようにゆっくりと手を伸ばし、懐へ抱き込む。オオバさんに手を振るとホッとしたように笑ってくれた。着地点はあそこだ。今度はしっかりと見定めて屋根を蹴る。
「良かったわ~。どう?怪我はしてない?あらーかなりの美人さんじゃない?」
いそいそと駆け寄るオオバさんへ子猫を手渡した。屋敷の中へ戻る姿を見送って後ろを振り返る。俺が降り立ったのは、目標地点の二メートルも手前。しっかりとチャクラを込めて飛び降りた。体の感覚におかしな所はない。なのにどうして。
どくどくと鳴る心臓をベストの上から撫でつけた。試しに印を組んでみる。ぼふんと煙を立てて現れた顔にほっとした。良かった、大丈夫じゃないかと手を伸ばした瞬間、現れた時と同じように煙を立てて消える。
「嘘だろ?」
もう一度、と印を組もうとして指先の震えに気がついた。これではまともに組むことなど出来ない。流れる冷や汗を拭おうとポーチから手ぬぐいを引っ張り出す。乱暴に拭い、口元に当てて静かに息を吐いた。ここは結界内だから、うまくチャクラを練ることができないのかもしれない。チャクラに異常があるのなら、何かしらの自覚症状が出るはずだ。落ち着け落ち着けと地面を見つめる目に、小さな紙屑が写った。拾い上げると鼻をつく独特な匂いが香る。ポーチに突っ込んでいた空の薬包だ。手ぬぐいに引っ掛かって落としてしまったらしい。認めたくはないが、杞憂だ大袈裟だと言っていたことこそが間違いだった。自覚が出る頃には手遅れという場合も多い。あの人達は知っていたのだろう。では、何を知っていて何を隠しているのだ。当事者の俺だけが何も知らない。
「眠れているんだな」
「はい」
「疲れやだるさは」
「……ない、と思いますが」
「体が重いことも?」
「はい」
ふむと腕組みをした綱手様がシズネさんに目配せをした。風呂敷を開いて紙袋を取り出し中を確認している。口を閉めて渡された袋の表面には内服薬と書いてあった。薬包が中でカサカサと鳴る。中を覗くと薬包が…………、七つ。
「毎朝忘れずに一包ずつ飲んでくださいね」
「これは何の薬ですか」
「栄養剤みたいなものですよ。夜しっかり寝ているのに昼間眠いというのは、気づかずともお疲れなのだと思います。環境が急に変わった上、ここにはカカシ様の独自の結界が張られていますから。自然と影響を受けているのかもしれません」
「そういうものですか」
「ただの栄養剤だ。深く考えないで飲んでおけ。忘れるなよ」
「はあ。……一週間分しかないということはまた診察を?」
「疲れが取れてなきゃ他の原因を考えなきゃならんだろう。定期的に診る。ここにはシラギクを診にくるからな。ついでだと思っておけ」
「はあ」
「調子が悪かったり、疲れが取れなかったりする時はすぐに連絡してくださいね」
「分かりました」
「何だ」
「俺そんなヤワに見えます?」
「里のヤツらはみんな小童同然だよ」
ふふんと眉を上げる姿にそりゃそうかと頭を下げた。
たいしたこと無いのに大袈裟だなーと思っていたわけだが、綱手様以上に大袈裟な人がいた。いつも十時近くに帰宅するカカシ様が、今日は七時過ぎに戻られたので驚いた。食事を温めるという俺を制し、テーブルに座らせる。向かい側に座って気遣わしげな表情で話し始める。いつもすぐにシラギク様のお部屋へ行かれるのに、どうしたのだろうか。
「先生、今日綱手様がいらっしゃいましたよね」
「はい。あの、良いんですか」
「何?」
「シラギク様は」
「うん。話が終わってからね。まず聞いて」
「はい」
切羽詰まった様子に口を挟めなくなってしまった。額当てを外して髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。何がそれほど気になっているのかさっぱりだ。
「お茶淹れましょうか?」
「いらない。ごめん、ちょっと纏らなくて」
「はあ」
ふうーと大きく息を吐いたカカシ様が天を仰いで目を瞑る。俺は本当にここへ座っていても良いのだろうか。暢気に座っている俺とは対象に、カカシ様はえらく真剣だ。場違いな空気にソワソワし始めた頃、ゆっくりと目を開いたカカシ様が俺を見た。
「綱手様の診察を受けましたね。眠気が取れないと聞きました。他に不調はありますか」
「ないです」
「本当に?」
「ありませんよ。眠気のことだって、オオバさんに言われて初めて思い出したくらいです。不眠なら問題かもしれませんが、夜はちゃんと眠れてるんですよ。だから心配いらないと思うのですが」
「薬を出されたでしょう。見せてください」
薬と言ってよいのかどうか。綱手様自身もただの栄養剤だと言っていた。平気ですよーと受け流すにはカカシ様の目が鋭すぎて、言われたとおり紙袋を差し出す。険しい表情で薬包を開くと、匂いを嗅いだ後小指の先に乗せてペロリと舐めた。そこまで徹底的に確認が必要なんだろうか。俺は一体何を処方されたのだろう。少し怖くなって恐る恐る切り出した。
「それ、おかしいところがあるんですか」
「ああ、ごめんね。大丈夫ただの栄養剤だよ。眠気は疲れのせいだと判断されたんだろうね」
元通り包んで返してくれたが、あんな扱いを受けた後じゃ危険物に見えるじゃないか。ほんの少し眉間に皺を寄せてポーチへしまう。綱手様を疑うわけじゃないけど、カカシ様の態度は変。つい覗うように上目がちになってしまって、胡乱げな視線を向けられた人が吹き出した。自分が原因なのに大笑いとは酷いもんだ。でもこの人、結構こういう所がある。
「ごめん。本当に何もないの。大丈夫だよそれ」
「でも……あれで?」
「うん。あれで」
平気平気とニコニコ笑うので口を閉じる。若干への字になってしまったのは見ないふりをしてもらおう。剣呑な表情は引っ込めたが、話はまだ終わらないらしい。今度こそと立ち上がろうとしたらまだ座ってろと合図された。
「その薬は忘れずに飲んでください」
「分かりました」
「絶対にですよ。本当は毎日俺がチェックしたいくらいなんだから」
「大袈裟じゃありませんか?やっぱりシズネさんの言う通り、結界に関係が?」
「まあここは、元々三代目が張っていた結界の上に俺が重ねがけしてるような状態になってるから。色々と複雑ではありますよ。幾重にも絡み合ってる所があるので」
「オオバさんは大丈夫なんですか」
「彼女は一般人なので、影響はありません。あなたの場合、結界がチャクラに反応してっていうこともあるかもね。何にせよ油断は禁物。どこか少しでも不都合を感じたらすぐに言うように。これは命令と受け取って頂いて構いません」
「命令?」
「はい」
たかがいち中忍の健康状態にどんな問題があるというんだ。わざわざ命令と言うほどの重さがあるとは思えない。三人で俺の知らない何かを隠している。じんじんと疼く後頭部が訴えてくるが、証拠も確信もないのではどうやって訴えればよいのだ。
「先生」
「分かりました」
身の内に生まれた疑問を押し隠して頷いた。きっと教えてはもらえない。
屋根の上に猫がいる。それが?と首を傾げたら、とにかく来てくれと引っ張られた。穏やかな晴れた昼下がりのこと。昼食の後片付けを終えた時だった。
オオバさんに引っ張っられていった先は、物干し竿のある庭だった。ハタハタとはためくシーツやタオルが長閑で平和な風景だ。ただそこに、少しそぐわない鳴き声が聞こえる。みーみーと響く声は弱々しく怯えが混ざっていた。屋根の上でひなたぼっこを楽しんでいるようには聞こえない。泣き声のする辺りを見ても、屋根の庇が邪魔をして確認出来なかった。下からは無理だ。
「カラスが連れてきたみたいなの。ちっちゃくて自分じゃ下りられないみたい」
「俺が連れてきますよ」
たかだか住居の屋根くらい一跳びだ。両足にチャクラを込めて飛び上がる。屋根の上に降り立つ瞬間、体がぐらりと傾ぐのを感じた。片足の踵が屋根の端からはみ出しているのに気づき、慌てて引き寄せた。予定よりも大分手前に下りている。おかしいなと思いながら慎重に歩き、小さな塊の前に膝をついた。真っ白な小さい毛玉がプルプルと震えている。
「もう大丈夫だぞ。ほら」
怖がらせないようにゆっくりと手を伸ばし、懐へ抱き込む。オオバさんに手を振るとホッとしたように笑ってくれた。着地点はあそこだ。今度はしっかりと見定めて屋根を蹴る。
「良かったわ~。どう?怪我はしてない?あらーかなりの美人さんじゃない?」
いそいそと駆け寄るオオバさんへ子猫を手渡した。屋敷の中へ戻る姿を見送って後ろを振り返る。俺が降り立ったのは、目標地点の二メートルも手前。しっかりとチャクラを込めて飛び降りた。体の感覚におかしな所はない。なのにどうして。
どくどくと鳴る心臓をベストの上から撫でつけた。試しに印を組んでみる。ぼふんと煙を立てて現れた顔にほっとした。良かった、大丈夫じゃないかと手を伸ばした瞬間、現れた時と同じように煙を立てて消える。
「嘘だろ?」
もう一度、と印を組もうとして指先の震えに気がついた。これではまともに組むことなど出来ない。流れる冷や汗を拭おうとポーチから手ぬぐいを引っ張り出す。乱暴に拭い、口元に当てて静かに息を吐いた。ここは結界内だから、うまくチャクラを練ることができないのかもしれない。チャクラに異常があるのなら、何かしらの自覚症状が出るはずだ。落ち着け落ち着けと地面を見つめる目に、小さな紙屑が写った。拾い上げると鼻をつく独特な匂いが香る。ポーチに突っ込んでいた空の薬包だ。手ぬぐいに引っ掛かって落としてしまったらしい。認めたくはないが、杞憂だ大袈裟だと言っていたことこそが間違いだった。自覚が出る頃には手遅れという場合も多い。あの人達は知っていたのだろう。では、何を知っていて何を隠しているのだ。当事者の俺だけが何も知らない。
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