◆各種設定ごった煮注意
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いっぱい食べる君が好き 俺は恋に落ち 食べる君を眺める幸せ いっぱい食べる君が好き
大口を開けてわしわしと飯を吸い込んでゆく姿に、何故か恋に落ちた。別に変な趣味は無いし食べられたいと思った訳でもない。実際に食べているのは俺の方だし。でも勢いよく食事をする姿って、なんか生命力を感じませんか。俺はどちらかというと死に近い位置にいる人間だと思っていたので、ほら、ああいう感じなんです。太陽を追う向日葵みたいな?嘘、よく言い過ぎた。夜の外灯に引き寄せられた羽虫かもしれない。それは言い過ぎだろうって思われるかもしれないが、案外ピッタリなんだよねえ。
いっぱい食べる君は嫌い いつも嫉妬まみれ ちょっとくらいは我慢してよ いっぱい食べる君は嫌い
ラブソングの二番がびっくりするほど醜い歌詞になったので。
子どもの頃を思い出し、料理をするようになった。食べる姿が好きなあの人を、お腹いっぱいにしてやるぞって思ったから。俺の作った料理をもりもりかきこむ姿を隣で見たい。
「えっ美味い!これ肉じゃがで合ってます……よね?」
これはありふれた料理でも、良い材料で丁寧に作ったら別物みたくピッカピカの味になることを知った時の先生。とても可愛い。
「はー……本当に蕩けるんだ。肉」
これはグラム○○両の特撰木ノ葉牛ですき焼きをした時の先生。もちろん横について一枚ずつサーブ致しましたとも。大変可愛い。
「生臭さはどこに置いてきたんですか。吐け。正直に吐け。もしくはこれ……魚の形をした何かですね?」
これは鯛の昆布締めを食べた時の先生。あんまり置くと身が固くなるし、昆布の風味が強すぎちゃうんだよね。先生を締めたいくらい可愛い。
等々。上げればキリが無い。俺は可愛い恋人が喜んだり驚いたり、ほっぺたが膨れるくらい頬張ってモグモグするのを隣でじっくり見られて、大層幸せでした。
「カカシさんの料理は本当に美味しいです。こんなに美味しい物を食べられて俺は幸せ者だなあ」
なーんて言ってくれちゃったりして、いやいや幸せをもらってるのはこっちですよ。あなたはどこまで俺を惚れさすんですか?って床をゴロゴロ転がりそうになったよね。しませんが。
胃袋をがっちり掴んで、先生は俺がいなきゃダメでしょうなんて有頂天。先生が幸せだと俺も幸せなんて感じに全てがキラキラして、毎日が万華鏡のよう。だった。
ある日の任務帰り。とっくに日は沈んで静かな里内を一人トボトボ歩いていた。先生の顔を見れば元気になるって分かってたけど、そこに至るまでの体の重さがしんどい。
あとちょっと歩けばって距離に押し潰されそうになる時もある。そんな時は体を癒やすものが欲しかった。特別な何かは必要ない。多分、自分が日常の中へ戻ってきちんと存在しているってことを確認したいのだろう。そうしたらあと少しの距離を踏ん張れる。自動販売機で買った缶コーヒーでもいいし、腹に入れる余裕があるなら一楽のラーメンでもいい。特別な人が出来る前は必要なかったはずの、「リセットする時間」を欲する自分は嫌いじゃなかった。何というか、すごくちゃんと人間だって感じがする。
一楽は里の中では遅くまでやっている店で、その日もまだ店に明かりがついていた。先生の家へ帰る前にと足を向けたら、ちょうど暖簾を潜って出てきた人がいて。
「ごちそう様でした!」
店を振り返る満足げな笑顔。満ち足りて幸せいっぱいな笑顔は、とてもよく見る俺だけの大事な顔であるはずでした。
ぱちんと目の前で指を鳴らされたように夢が覚めて、立ち尽くしてしまったんですよね。何とも盛大な勘違い。「いっぱい食べる君」が好きなのは俺で、「いっぱい食べる」君が好きなのは美味しい物。カカシさんの料理は好きだけど、カカシさんの料理だけが好きなわけじゃない。先生は一楽のラーメンだって大好きで幸せになれるワケです。泣きたい。
付き合い始めてからとにかく手料理ばかりを食べさせていたので、すっかり忘れていた。この人は何でも美味しく食べる人。食べることが大好きで、幸せそうに大量の食べ物を飲み込む人だった。
たまにはどうです?って、定食屋や居酒屋へ行ってみました。そしたらねえ、先生はとっても幸せそうに食べてましたよ。定食屋の玉ねぎでかさ増しされてる牛鍋を、特撰牛のすき焼きと同じように嬉しそうに食べてくれちゃって、思わず腹の中で毒づいてしまう。なーにが特別か。どう見ても同じ顔だわ。
浮かれすぎた俺は、物事を引っ繰り返して見てしまったんだろうなあと思います。「その顔が好き」だったのに、「俺がその顔にさせている」が先にきてしまったのかも。結論として好きは変わらないので、もう嫉妬の嵐がびゅんびゅんと。
一楽のチャーシューにそんなに目尻を下げないで!とか。居酒屋の焼き鳥で悩ましげなため息をつかないで!とか。甘栗甘の団子にほっぺたをピンクにしないで!まで。
好きな人には特別扱いしてもらいたいものですよね?でもどんなに手の込んだ料理でも、先生の前では一緒なのかなと思ってしまって俺はブルー。気力が尽きてしまうとダメで、こう、夜の方もあれな感じで、坂道を転げ落ちるように……。
先生の恋人として立っていた土台ががしゃんと潰れてしまったので、俺はグラグラしながら片足立ちの日々。こんなにもあなたの事が好きなんです!って証明しなきゃダメな気がして、とうとう天ぷらを作らねばならない所まで追い詰められました。先生、天そば好きなんですよ。俺は食べないけど。
材料を用意するまではしたけど、いざ鍋に張った油を見て固まってしまいました。俺は一体何を?これって本当に必要なことなんだろうか。
「必要じゃないですねえ。少なくとも俺はいらないなあ」
ドキッとして振り返れば、冷蔵庫に寄りかかった先生が冷たい油を眺めていた。口に出していたのかとじっとり汗が浮く。
「天ぷら食べたいんですか」
「いえ。俺は」
「ですよねえ」
はいはい交代と、腕まくりをした先生が台所に立つ。
「海老ちょっともらいますね。勿体ないからちょっとだけ」
「はい」
殻を剥いてあった海老を腹から開いてぺったんこにする。衣のボールに小麦粉と出汁を足してぐるぐる混ぜた。新しく出したフライパンに油をひき、火を付けて小麦粉を流し込む。丸く整えて真ん中よりちょっと上に開いた海老。生地に火が通ってきたら引っ繰り返して裏面も焼いた。
「ん、いーかな。皿お願いします」
もう一度引っ繰り返し、ソースを塗ってから上に青のりと鰹節。最後に半分に折って皿に載せた。
「召し上がれ」
キャベツのないお好み焼きのようなものだろうか。ぺしゃんとしているがソースのいい匂いがする。囓ってみるとソースの中にふんわり出汁の香りがして、素朴な味だが美味かった。
「美味しいです」
「小麦粉だけでも結構いけるでしょ。フツーは干しエビとかなんで、今日は贅沢バーション」
あーんと口を開けるので、箸で摘まんで先生の口まで運んであげました。先生はやっぱりニコニコして美味そうに食べる。
「たったこんだけでも食べれるのに、料理ってすごいですよねえ。手間をかけたりいい物を使ったり、溢れるほどの愛情をこめてもらっちゃって。俺は本当に幸せだ」
「先生……」
「愛情の中に我慢まで入れなくていいです。俺、カカシさんがニコニコしながら料理してるの好きなのに。俺だけの特別な顔、自分でも大事にして下さいよ」
ね?と言いながら、残りをあんぐと頬張ってしまった。ほっぺたを膨らませて幸せそうに目を細めて。ちゃんと受け取ってくれてたんだなって分かったら、嬉しくないワケがない。俺のこめた愛情ごと、先生はぱくぱく食べて笑ってくれていたんだなって、それはやっぱり幸せなので。
ああ、やっぱり俺はいっぱい食べる君が好きです。
2021/11/29
大口を開けてわしわしと飯を吸い込んでゆく姿に、何故か恋に落ちた。別に変な趣味は無いし食べられたいと思った訳でもない。実際に食べているのは俺の方だし。でも勢いよく食事をする姿って、なんか生命力を感じませんか。俺はどちらかというと死に近い位置にいる人間だと思っていたので、ほら、ああいう感じなんです。太陽を追う向日葵みたいな?嘘、よく言い過ぎた。夜の外灯に引き寄せられた羽虫かもしれない。それは言い過ぎだろうって思われるかもしれないが、案外ピッタリなんだよねえ。
いっぱい食べる君は嫌い いつも嫉妬まみれ ちょっとくらいは我慢してよ いっぱい食べる君は嫌い
ラブソングの二番がびっくりするほど醜い歌詞になったので。
子どもの頃を思い出し、料理をするようになった。食べる姿が好きなあの人を、お腹いっぱいにしてやるぞって思ったから。俺の作った料理をもりもりかきこむ姿を隣で見たい。
「えっ美味い!これ肉じゃがで合ってます……よね?」
これはありふれた料理でも、良い材料で丁寧に作ったら別物みたくピッカピカの味になることを知った時の先生。とても可愛い。
「はー……本当に蕩けるんだ。肉」
これはグラム○○両の特撰木ノ葉牛ですき焼きをした時の先生。もちろん横について一枚ずつサーブ致しましたとも。大変可愛い。
「生臭さはどこに置いてきたんですか。吐け。正直に吐け。もしくはこれ……魚の形をした何かですね?」
これは鯛の昆布締めを食べた時の先生。あんまり置くと身が固くなるし、昆布の風味が強すぎちゃうんだよね。先生を締めたいくらい可愛い。
等々。上げればキリが無い。俺は可愛い恋人が喜んだり驚いたり、ほっぺたが膨れるくらい頬張ってモグモグするのを隣でじっくり見られて、大層幸せでした。
「カカシさんの料理は本当に美味しいです。こんなに美味しい物を食べられて俺は幸せ者だなあ」
なーんて言ってくれちゃったりして、いやいや幸せをもらってるのはこっちですよ。あなたはどこまで俺を惚れさすんですか?って床をゴロゴロ転がりそうになったよね。しませんが。
胃袋をがっちり掴んで、先生は俺がいなきゃダメでしょうなんて有頂天。先生が幸せだと俺も幸せなんて感じに全てがキラキラして、毎日が万華鏡のよう。だった。
ある日の任務帰り。とっくに日は沈んで静かな里内を一人トボトボ歩いていた。先生の顔を見れば元気になるって分かってたけど、そこに至るまでの体の重さがしんどい。
あとちょっと歩けばって距離に押し潰されそうになる時もある。そんな時は体を癒やすものが欲しかった。特別な何かは必要ない。多分、自分が日常の中へ戻ってきちんと存在しているってことを確認したいのだろう。そうしたらあと少しの距離を踏ん張れる。自動販売機で買った缶コーヒーでもいいし、腹に入れる余裕があるなら一楽のラーメンでもいい。特別な人が出来る前は必要なかったはずの、「リセットする時間」を欲する自分は嫌いじゃなかった。何というか、すごくちゃんと人間だって感じがする。
一楽は里の中では遅くまでやっている店で、その日もまだ店に明かりがついていた。先生の家へ帰る前にと足を向けたら、ちょうど暖簾を潜って出てきた人がいて。
「ごちそう様でした!」
店を振り返る満足げな笑顔。満ち足りて幸せいっぱいな笑顔は、とてもよく見る俺だけの大事な顔であるはずでした。
ぱちんと目の前で指を鳴らされたように夢が覚めて、立ち尽くしてしまったんですよね。何とも盛大な勘違い。「いっぱい食べる君」が好きなのは俺で、「いっぱい食べる」君が好きなのは美味しい物。カカシさんの料理は好きだけど、カカシさんの料理だけが好きなわけじゃない。先生は一楽のラーメンだって大好きで幸せになれるワケです。泣きたい。
付き合い始めてからとにかく手料理ばかりを食べさせていたので、すっかり忘れていた。この人は何でも美味しく食べる人。食べることが大好きで、幸せそうに大量の食べ物を飲み込む人だった。
たまにはどうです?って、定食屋や居酒屋へ行ってみました。そしたらねえ、先生はとっても幸せそうに食べてましたよ。定食屋の玉ねぎでかさ増しされてる牛鍋を、特撰牛のすき焼きと同じように嬉しそうに食べてくれちゃって、思わず腹の中で毒づいてしまう。なーにが特別か。どう見ても同じ顔だわ。
浮かれすぎた俺は、物事を引っ繰り返して見てしまったんだろうなあと思います。「その顔が好き」だったのに、「俺がその顔にさせている」が先にきてしまったのかも。結論として好きは変わらないので、もう嫉妬の嵐がびゅんびゅんと。
一楽のチャーシューにそんなに目尻を下げないで!とか。居酒屋の焼き鳥で悩ましげなため息をつかないで!とか。甘栗甘の団子にほっぺたをピンクにしないで!まで。
好きな人には特別扱いしてもらいたいものですよね?でもどんなに手の込んだ料理でも、先生の前では一緒なのかなと思ってしまって俺はブルー。気力が尽きてしまうとダメで、こう、夜の方もあれな感じで、坂道を転げ落ちるように……。
先生の恋人として立っていた土台ががしゃんと潰れてしまったので、俺はグラグラしながら片足立ちの日々。こんなにもあなたの事が好きなんです!って証明しなきゃダメな気がして、とうとう天ぷらを作らねばならない所まで追い詰められました。先生、天そば好きなんですよ。俺は食べないけど。
材料を用意するまではしたけど、いざ鍋に張った油を見て固まってしまいました。俺は一体何を?これって本当に必要なことなんだろうか。
「必要じゃないですねえ。少なくとも俺はいらないなあ」
ドキッとして振り返れば、冷蔵庫に寄りかかった先生が冷たい油を眺めていた。口に出していたのかとじっとり汗が浮く。
「天ぷら食べたいんですか」
「いえ。俺は」
「ですよねえ」
はいはい交代と、腕まくりをした先生が台所に立つ。
「海老ちょっともらいますね。勿体ないからちょっとだけ」
「はい」
殻を剥いてあった海老を腹から開いてぺったんこにする。衣のボールに小麦粉と出汁を足してぐるぐる混ぜた。新しく出したフライパンに油をひき、火を付けて小麦粉を流し込む。丸く整えて真ん中よりちょっと上に開いた海老。生地に火が通ってきたら引っ繰り返して裏面も焼いた。
「ん、いーかな。皿お願いします」
もう一度引っ繰り返し、ソースを塗ってから上に青のりと鰹節。最後に半分に折って皿に載せた。
「召し上がれ」
キャベツのないお好み焼きのようなものだろうか。ぺしゃんとしているがソースのいい匂いがする。囓ってみるとソースの中にふんわり出汁の香りがして、素朴な味だが美味かった。
「美味しいです」
「小麦粉だけでも結構いけるでしょ。フツーは干しエビとかなんで、今日は贅沢バーション」
あーんと口を開けるので、箸で摘まんで先生の口まで運んであげました。先生はやっぱりニコニコして美味そうに食べる。
「たったこんだけでも食べれるのに、料理ってすごいですよねえ。手間をかけたりいい物を使ったり、溢れるほどの愛情をこめてもらっちゃって。俺は本当に幸せだ」
「先生……」
「愛情の中に我慢まで入れなくていいです。俺、カカシさんがニコニコしながら料理してるの好きなのに。俺だけの特別な顔、自分でも大事にして下さいよ」
ね?と言いながら、残りをあんぐと頬張ってしまった。ほっぺたを膨らませて幸せそうに目を細めて。ちゃんと受け取ってくれてたんだなって分かったら、嬉しくないワケがない。俺のこめた愛情ごと、先生はぱくぱく食べて笑ってくれていたんだなって、それはやっぱり幸せなので。
ああ、やっぱり俺はいっぱい食べる君が好きです。
2021/11/29
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