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夕方 9/15 17:13

 混み合っていた受付も徐々に人が捌けてきた。これなら定時であがれるなと時計を見上げれば、隅の壁に寄りかかっていた人も同じように顔を上げる。いいんだが。同棲している恋人同士、一緒に帰りましょうっていうのは分かるのだが。
「はたけ上忍なんかソワソワしてんな」
「珍しくね?」
「イルカ……浮気されたのか」
「お前愛想無いもんなあ。フツー恋人に対してはもっとラブラブとした空気をだな」
 普段は気のいいヤツらだが、こういう時悪ノリするから困る。ぺしぺしっと順に頭をファイルで叩き、勢いをつけたままファイルを処理済みの箱へ放り込んだ。
 笑いってのは、絶対に起こりえないという安心感の上で生じるものだ。あのイケメンっぷりを見ろよ。誰にどうモテたって納得の立ち姿だろうが。無駄に人の不安を煽るんじゃねえとブツブツ言ってると、スッと鞄を差し出された。
「悪かった。もう上がっていいぞ」
「ごめん。はたけ上忍によろしくな」
「お前がそんなに不安がってるとは思わなかったんだよ。確かに相手は里の誉、一流の忍。いちアカデミー教師で単なる受付の中忍じゃ」
「だーかーらお前はひと言多いんだよ」
 ぎゅっと鼻を摘まんで立ち上がる。続きもあったのだが言わなくて正解だった。好意はありがたく受けておこう。今日は恋人の誕生日だ。
 鞄を受け取った俺を見て、広げていたイチャパラをいそいそとポーチにしまう。今にも飛んできそうな顔は、ここが受付だってことを忘れてるんじゃないかってくらい緩んでる。
「浮気?……ありえねえな」
「そうだよ」
 ふふんと笑ってカウンターを乗り越える。今日の仕事はもう終わり。ここからは恋人同士のランデブーだ。こちらへ来ようとするカカシさんに入り口を指す。二人でドアを抜けたら、もう自由だ。
「お待たせしました」
「どうする?」
「それはこっちのセリフだと思うんですが」
「先生がしたいことをして欲しいの」
 ギリギリセーフの茄子煮麺。あり合わせのおにぎり弁当。まるでこちらの愛を試されているような一日になってしまったが、完全に俺の邪推だ。どの瞬間も蕩けるような笑みを浮かべる人は、嬉しい幸せと全身で告げている。彼の期待に見合うものを用意出来なかったと感じているのは俺だけなのだろう。多分カカシさんは、寝坊して時間がないからと缶コーヒーを渡しても、ありがとうと笑うのだ。

 俺だって出来ることなら朝から秋刀魚と茄子の味噌汁を出したりしたかったけど、ここのところ残業続きですっぽ抜けてしまった。確か三日前にはもうすぐだと確認した覚えがあるのに、いつの間に頭から抜け落ちてしまったのか。眩しい笑顔がさらに胃を重くする。
「先生、どうしたの?やっぱりお腹痛い?」
「お誕生日様は王様なんですよ。ちゃんと讃えられなくてすみません」
「何言ってるの?俺幸せ」
「それは見てりゃ分かるんですけどね」
 違うんだよなあとつい肩が落ちる。一年に一度の特別な日は特別な思いをさせてあげたいと思っていた。これではまるでいつもの俺達だ。
「じゃあ王様からお願い」
 鞄の肩紐を掴んでいた手をちょんちょんと突かれた。はい、と手のひらを向けられる。
「手を繋いでもいい?外だけど。まだ、明るいけど」
 精一杯のお願いがそれなのか。謙虚にもほどがあるってもんだ。だけど、これは特別。紛れもない特別なひとつだ。俺も彼もそれはよく分かっている。

 犬がお手をするようにポンと手を載せた。カカシさんは重なった手をしばらく眺めていたが、するりと返して指を絡ませた。包まれた手のひらが温かい。顔がやけるように熱いのは夕陽を浴びているせいだ。
「たくさん買い物して帰ろうね」
「……はい」
 歩き出した二人の間で繋いだ手が揺れていた。
2021/09/15(水) 17:32 記念日 COMMENT(0)
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