◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
鞄のポケットを探って自転車の鍵を取り出す。しょうがない、困ってる人は見捨てられない性分なんだから。性格だからしょうがない、諦めろ。沸々と沸き上がる疑問と苛立ちを押し潰すには何が良いだろう。せめて美味しいものでも食べなくっちゃ。今日の特売は何だったっけ。頭の中でチラシを裏返した。
「お待たせ。住所はね、ここ」
ニッコリ笑って向けられたのは、ガラケーの液晶画面。……ふーん、そうなんだ?
***
一歩も引かない所か、攻め所を見切ったとでもいうように距離を詰められた。ちょっと屈み込んだ上半身が影を造る。思わず首を竦めて見つめちゃったけど、これは間違ってたかもしれない。ぬかった。
「うみのさんは真面目。人の気持ちを考えられるし、物を粗末に出来ない子」
「何ですか突然」
「昨日のスーパーの様子や、昼の怒りっぷりを見てたら分かるよ。でね、ちょっと意地っ張り?」
「はああ!?」
困ったなと寄せられていた眉が一気に吊り上がる。さっきまでは苛々してめんどいって思ってただけで、ムカつくまでは思ってなかった。今は評価がぐるっと逆回転。まだこの人と会って二日しか経ってないのに、何ぜーんぶ分かったようなこと言ってんのよ。知ったかぶって人のことをズケズケ言うやつは信用できないし、もう切ってヨシ!ふんと大きく鼻息を吐いた。
「お話はもういいですか?自転車出したいからそこどいて」
「怒るのは図星の証拠でしょ」
会話したくないんだっつうの!思いっきり目力を込めて睨んでやったのに、へらっと笑ってる。わームカつく、あー腹立つ!もうそのお綺麗なほっぺた思い切り引っ張っても良いんじゃないかな。私の中ではカウントダウン始まってるよ?さーん、にーい、いーーー。
「捨てられる寸前の可哀相なリップクリームと、迷子を助けてくれない?」
「迷子?」
つい返してしまった言葉に内心頭を掻きむしった。ここはぜーったい反応しちゃいけないとこだったし、よっく分かってた!人の話を聞きましょうって、人生ハードモードへの第一条件だと思う。イージーモードで生きるには、適当なスルー技術が欠かせないもん。知ってるのに出来ないから私なんだけどさ。
問題は、目の前のイケメンがその恩恵を十分に受けつつ生きてきたっぽい人って所。こういう人、はっきり言って苦手だ。どんどん自分が不利な状況に追い込まれていきそうで怖い。やんわりと細められた目が却って神経を逆撫でする。ヘラヘラすんな。
「今の意味はないんで。忘れてください」
「無理でしょ?多分、君の方が」
「……」
「高確率で確定してる未来の話ね。迷子になるのは俺。待ち合わせしてるのに、行き方が分からない」
「相手に聞けばいいじゃないですか」
「連絡手段持ってないの。わんこだから」
「わんこ」
「知り合いの所で待ってるから迎えに行く予定だったんだけど、電話番号聞き忘れちゃった。住所しか分からないから一人じゃ辿り着けない」
「検索すればいいでしょう」
「大通りの店とかならともかく、住宅街なんて出ないよ。しかもそういうとこに限って、路地の突き当たりを曲がってーみたいなややこしさない?」
言ってることは分かる。けど、この漂う胡散臭さは何なのだ。本当にご主人様を待ってる可哀相なわんこなんているのかしらと、疑いを捨てきれない。もちろん、目の前の人の自業自得だと思う。
「案内してくれるお礼をさせて?はい」
改めて差し出されたリップクリームは、パッケージに包まれたまま。昨日、男子の余計な一言さえなければ今頃私が買ってたはずの、いつもよりちょっとだけリッチな色付きリップだ。ちらりと見上げた顔は笑いを浮かべつつも、びみょーに頬の端が引き攣ってる。スーパーで何も言わずに助けてくれたイケメンと、不躾な交換条件を出してリップを押し付けてくる先輩と、どっちが本当の彼なんだろう。どっちだって関係ないし、だから何?って突っぱねたって良い。それはすっごく分かってる、けど。
ニッコリ笑いつつも引き攣る頬は、とても馴染みのあるもので。鏡の前にいる今より小さい自分を思い出してしまったから、しょうがなかった。道案内の御礼と、ご主人様を待つわんこ。私が手を伸ばせるポイントを、ちゃんと示してくれたもの。迷うってことは、すでに心が傾いてるのも分かってる。どうしようかなって思ったのがもう答えだ。私はリップクリームが欲しかったし、困ってる人を放っておけないし、わんこの為だから。
白い手の中に収まっているリップクリームを、そーっと人差し指と親指で摘み上げる。安心したように笑った顔には影がなく、イケメン度はさらに増し、銀髪はキラキラ輝いてるわけで。
「……ズルい」
「え?」
聞き返すなっつーの。
***
ちょっと待ってねと言って鞄を漁りはじめたので、先に自転車を動かした。鞄をカゴに放り込んでバックしたら、ここだよとガラケーの液晶を向けられる。あれ?
「あの、はたけ先輩って」
「カカシ。カカシでいーよ」
「はたけ先輩ってスマホじゃないんですか」
「……はい。カカシの携帯電話はガラケーですが」
「何で?」
「えっ何でって……、ダメ?」
意外だ。すっごおーく意外だった。キラキライケメンならスマホ必須じゃない?今やクラスでガラケーを使ってるのなんて私くらいだもん。家の決まりで持ちだ出し禁止とか持ってない子はいるけど、ガラケーを使ってる子なんてほぼいないのに。数少ない同士がここにいた。
「ガラケー不便じゃありません?」
「別に。電話とメールが出来れば他に使わないもん」
そっか。そういえばこの人私を待伏せてる間、文庫を開いてたっけ。そっか、スマホでゲームしたり音楽聞いたりしなくても、本を読んでる人なんだ。何だ、そっか。
「どうかした?」
「いーえ。いまどき珍しいなって思って。ま、私もガラケーなんですけど」
「あ、じゃあ電話番号とメアドを」
「正門向かいますね」
有無を言わさず自転車を引きはじめる。背中で小さくはいと聞こえた。
「お待たせ。住所はね、ここ」
ニッコリ笑って向けられたのは、ガラケーの液晶画面。……ふーん、そうなんだ?
***
一歩も引かない所か、攻め所を見切ったとでもいうように距離を詰められた。ちょっと屈み込んだ上半身が影を造る。思わず首を竦めて見つめちゃったけど、これは間違ってたかもしれない。ぬかった。
「うみのさんは真面目。人の気持ちを考えられるし、物を粗末に出来ない子」
「何ですか突然」
「昨日のスーパーの様子や、昼の怒りっぷりを見てたら分かるよ。でね、ちょっと意地っ張り?」
「はああ!?」
困ったなと寄せられていた眉が一気に吊り上がる。さっきまでは苛々してめんどいって思ってただけで、ムカつくまでは思ってなかった。今は評価がぐるっと逆回転。まだこの人と会って二日しか経ってないのに、何ぜーんぶ分かったようなこと言ってんのよ。知ったかぶって人のことをズケズケ言うやつは信用できないし、もう切ってヨシ!ふんと大きく鼻息を吐いた。
「お話はもういいですか?自転車出したいからそこどいて」
「怒るのは図星の証拠でしょ」
会話したくないんだっつうの!思いっきり目力を込めて睨んでやったのに、へらっと笑ってる。わームカつく、あー腹立つ!もうそのお綺麗なほっぺた思い切り引っ張っても良いんじゃないかな。私の中ではカウントダウン始まってるよ?さーん、にーい、いーーー。
「捨てられる寸前の可哀相なリップクリームと、迷子を助けてくれない?」
「迷子?」
つい返してしまった言葉に内心頭を掻きむしった。ここはぜーったい反応しちゃいけないとこだったし、よっく分かってた!人の話を聞きましょうって、人生ハードモードへの第一条件だと思う。イージーモードで生きるには、適当なスルー技術が欠かせないもん。知ってるのに出来ないから私なんだけどさ。
問題は、目の前のイケメンがその恩恵を十分に受けつつ生きてきたっぽい人って所。こういう人、はっきり言って苦手だ。どんどん自分が不利な状況に追い込まれていきそうで怖い。やんわりと細められた目が却って神経を逆撫でする。ヘラヘラすんな。
「今の意味はないんで。忘れてください」
「無理でしょ?多分、君の方が」
「……」
「高確率で確定してる未来の話ね。迷子になるのは俺。待ち合わせしてるのに、行き方が分からない」
「相手に聞けばいいじゃないですか」
「連絡手段持ってないの。わんこだから」
「わんこ」
「知り合いの所で待ってるから迎えに行く予定だったんだけど、電話番号聞き忘れちゃった。住所しか分からないから一人じゃ辿り着けない」
「検索すればいいでしょう」
「大通りの店とかならともかく、住宅街なんて出ないよ。しかもそういうとこに限って、路地の突き当たりを曲がってーみたいなややこしさない?」
言ってることは分かる。けど、この漂う胡散臭さは何なのだ。本当にご主人様を待ってる可哀相なわんこなんているのかしらと、疑いを捨てきれない。もちろん、目の前の人の自業自得だと思う。
「案内してくれるお礼をさせて?はい」
改めて差し出されたリップクリームは、パッケージに包まれたまま。昨日、男子の余計な一言さえなければ今頃私が買ってたはずの、いつもよりちょっとだけリッチな色付きリップだ。ちらりと見上げた顔は笑いを浮かべつつも、びみょーに頬の端が引き攣ってる。スーパーで何も言わずに助けてくれたイケメンと、不躾な交換条件を出してリップを押し付けてくる先輩と、どっちが本当の彼なんだろう。どっちだって関係ないし、だから何?って突っぱねたって良い。それはすっごく分かってる、けど。
ニッコリ笑いつつも引き攣る頬は、とても馴染みのあるもので。鏡の前にいる今より小さい自分を思い出してしまったから、しょうがなかった。道案内の御礼と、ご主人様を待つわんこ。私が手を伸ばせるポイントを、ちゃんと示してくれたもの。迷うってことは、すでに心が傾いてるのも分かってる。どうしようかなって思ったのがもう答えだ。私はリップクリームが欲しかったし、困ってる人を放っておけないし、わんこの為だから。
白い手の中に収まっているリップクリームを、そーっと人差し指と親指で摘み上げる。安心したように笑った顔には影がなく、イケメン度はさらに増し、銀髪はキラキラ輝いてるわけで。
「……ズルい」
「え?」
聞き返すなっつーの。
***
ちょっと待ってねと言って鞄を漁りはじめたので、先に自転車を動かした。鞄をカゴに放り込んでバックしたら、ここだよとガラケーの液晶を向けられる。あれ?
「あの、はたけ先輩って」
「カカシ。カカシでいーよ」
「はたけ先輩ってスマホじゃないんですか」
「……はい。カカシの携帯電話はガラケーですが」
「何で?」
「えっ何でって……、ダメ?」
意外だ。すっごおーく意外だった。キラキライケメンならスマホ必須じゃない?今やクラスでガラケーを使ってるのなんて私くらいだもん。家の決まりで持ちだ出し禁止とか持ってない子はいるけど、ガラケーを使ってる子なんてほぼいないのに。数少ない同士がここにいた。
「ガラケー不便じゃありません?」
「別に。電話とメールが出来れば他に使わないもん」
そっか。そういえばこの人私を待伏せてる間、文庫を開いてたっけ。そっか、スマホでゲームしたり音楽聞いたりしなくても、本を読んでる人なんだ。何だ、そっか。
「どうかした?」
「いーえ。いまどき珍しいなって思って。ま、私もガラケーなんですけど」
「あ、じゃあ電話番号とメアドを」
「正門向かいますね」
有無を言わさず自転車を引きはじめる。背中で小さくはいと聞こえた。
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