◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
ベッドに入り目を閉じる。目蓋の裏には今日も一日疲れたなあとか、明日の朝一にやることなんかがつらつらと。ぼんやりと漂う意識が鈍くなり徐々に靄がかかり始める。ふつりと意識が途切れたら、次に靄が晴れるのは目覚まし時計の音と共に。
一人で入るベッドを当たり前と捉えたのはいつからだろうか。若い時は眠る瞬間まで外の気配を探っていた。電気が消えた部屋を確かめるように窓の傍の梢が揺れる音。深夜に恋人がそーっとドアのノブを回す音。カチリと鍵を回す音が聞こえたらおかえりなさいを言う為に布団を撥ねのけて飛び起きた。「寝てていいのに」と言う彼は、いつだって口とは裏腹に嬉しそうに目を細めていたものだ。風呂は飯はとまとわりつき、時にはそのまま抱きかかえられてベッドへ逆戻りなんて時もあった。俺の恋人。格好良くて優しい俺の大好きな人。彼と一緒にいられるのが嬉しくてただひたすら幸せだった。
里の誉とまで言われた人は忙しく、会えない時間の方が多い。障害は恋のスパイスだとか会えない時間が愛を育てるとか色々言う人もいたけれど、それを信じていたら俺達の愛は超絶激辛の五大国サイズになっているはずだ。大袈裟とは言えないくらい、本当に時間が無かった。だからこそ会えるのが待ち遠しくて、俺も彼もいつだってその時を楽しみにしていたのだ。
距離のおかげかは知らないが、俺達の愛が硬く強いものとなったのは間違いない。お互いを思い合う二人はめでたしめでたしの後もずっと一緒にいる。もう十年以上になるのではないだろうか。
ただ、時間が経つにつれ色々と変化するのは仕方がないのだろう。彼だけを思いほんの僅かな音も聞き漏らさないようにしていた時間は、いつの間にか日々の些末を浮かべるようになり、ただいまと言う人を玄関へ迎えに出ることも少なくなった。もちろん嫌いになったわけではなくて、ただ、何となく。あの頃の彼の元へ飛んでいこうという弾みが、いつしか消えてしまっただけのことだ。体を動かしていた元気の良い感情は徐々に跳ねることを止め、心を揺らすことさえ僅かになった。人生とはそういうものだから、今の状態は俺が彼と共に生きているという証だと思えば喜ばしくもある。
火影である彼は相変わらず忙しい。里の長なら当然のこと、自分自身もアカデミーの校長として何かとバタバタしている。就任仕立ての頃よりも家で会う時間は増えたけれど、その分当たり前過ぎる時間に希少性は薄くなり、緩やかな日々を送っていた。温泉へ行こうとかイチャパラの聖地を巡ろうだとか、将来の話を出来るくらいには世界が穏やかだ。俺達の人生の終わりもそれに沿うものであれば良い、隣にいる人はこのままであれば言うことがないと思うくらい年を取った。二人とも両親が亡くなった年を越え戦場を駆け回ることもなく、嘘みたいな世界が現実となっている。共に過ごす時間が短かったからこそ今がどれだけ幸せなことか分かっていて、すっかり油断していた。落とし穴というのは見えないからこそ恐ろしいのだとよく知っていたはずなのに。
彼は火影室で仕事、俺はアカデミー。近いと言ってもそれぞれ仕事場所は別にあり顔を合わせることは少ない。俺自身は校長に就任してから直に子ども達を教えることが無くなり、少し淋しさを感じる時もあった。それでもアカデミーに溢れる子どもの声は心を明るくする。里にとっても大事な場所だ。
子ども達が帰った放課後のアカデミーで職員室から校長室へ戻る途中、今や火影の片腕として働く元生徒を見かけた。多忙な火影の補佐は当然忙しいのだが、シカマルは口癖のわりに意外と律儀でわざわざ声をかけにきてくれた。他愛の無い日常の話を一つ二つ、お互い忙しいなと笑って去るはずが思わぬ所で引っかかった。
「最近カカシさんの帰りが遅いが、お前もだろう?家は大丈夫か」
「え……まあ、うちは」
「そうか。無理するなよ」
「はい。先生も」
それじゃと互いに歩き出す。踏み出す足の一歩一歩が妙にふわついて笑えてきた。この年で、いまさらこんな気分を味わうとは。クツクツ漏れる笑いを抑えることが出来ない。校長室の扉を閉め、一人になったことに安堵して声を上げて笑った。おかしい。本当に、笑える。彼と付き合ってもう十年以上だ。互いに四十を越え情熱も無くなったが、いずれは穏やかな余生をと思っていたのは俺だけらしい。そのことに気づいて足元に不安を覚えるほど動揺するなんて。
「いい年をして」
掠れた笑い声に湿り気が混じりそうで扉に額をつけて目を閉じた。
一人で入るベッドを当たり前と捉えたのはいつからだろうか。若い時は眠る瞬間まで外の気配を探っていた。電気が消えた部屋を確かめるように窓の傍の梢が揺れる音。深夜に恋人がそーっとドアのノブを回す音。カチリと鍵を回す音が聞こえたらおかえりなさいを言う為に布団を撥ねのけて飛び起きた。「寝てていいのに」と言う彼は、いつだって口とは裏腹に嬉しそうに目を細めていたものだ。風呂は飯はとまとわりつき、時にはそのまま抱きかかえられてベッドへ逆戻りなんて時もあった。俺の恋人。格好良くて優しい俺の大好きな人。彼と一緒にいられるのが嬉しくてただひたすら幸せだった。
里の誉とまで言われた人は忙しく、会えない時間の方が多い。障害は恋のスパイスだとか会えない時間が愛を育てるとか色々言う人もいたけれど、それを信じていたら俺達の愛は超絶激辛の五大国サイズになっているはずだ。大袈裟とは言えないくらい、本当に時間が無かった。だからこそ会えるのが待ち遠しくて、俺も彼もいつだってその時を楽しみにしていたのだ。
距離のおかげかは知らないが、俺達の愛が硬く強いものとなったのは間違いない。お互いを思い合う二人はめでたしめでたしの後もずっと一緒にいる。もう十年以上になるのではないだろうか。
ただ、時間が経つにつれ色々と変化するのは仕方がないのだろう。彼だけを思いほんの僅かな音も聞き漏らさないようにしていた時間は、いつの間にか日々の些末を浮かべるようになり、ただいまと言う人を玄関へ迎えに出ることも少なくなった。もちろん嫌いになったわけではなくて、ただ、何となく。あの頃の彼の元へ飛んでいこうという弾みが、いつしか消えてしまっただけのことだ。体を動かしていた元気の良い感情は徐々に跳ねることを止め、心を揺らすことさえ僅かになった。人生とはそういうものだから、今の状態は俺が彼と共に生きているという証だと思えば喜ばしくもある。
火影である彼は相変わらず忙しい。里の長なら当然のこと、自分自身もアカデミーの校長として何かとバタバタしている。就任仕立ての頃よりも家で会う時間は増えたけれど、その分当たり前過ぎる時間に希少性は薄くなり、緩やかな日々を送っていた。温泉へ行こうとかイチャパラの聖地を巡ろうだとか、将来の話を出来るくらいには世界が穏やかだ。俺達の人生の終わりもそれに沿うものであれば良い、隣にいる人はこのままであれば言うことがないと思うくらい年を取った。二人とも両親が亡くなった年を越え戦場を駆け回ることもなく、嘘みたいな世界が現実となっている。共に過ごす時間が短かったからこそ今がどれだけ幸せなことか分かっていて、すっかり油断していた。落とし穴というのは見えないからこそ恐ろしいのだとよく知っていたはずなのに。
彼は火影室で仕事、俺はアカデミー。近いと言ってもそれぞれ仕事場所は別にあり顔を合わせることは少ない。俺自身は校長に就任してから直に子ども達を教えることが無くなり、少し淋しさを感じる時もあった。それでもアカデミーに溢れる子どもの声は心を明るくする。里にとっても大事な場所だ。
子ども達が帰った放課後のアカデミーで職員室から校長室へ戻る途中、今や火影の片腕として働く元生徒を見かけた。多忙な火影の補佐は当然忙しいのだが、シカマルは口癖のわりに意外と律儀でわざわざ声をかけにきてくれた。他愛の無い日常の話を一つ二つ、お互い忙しいなと笑って去るはずが思わぬ所で引っかかった。
「最近カカシさんの帰りが遅いが、お前もだろう?家は大丈夫か」
「え……まあ、うちは」
「そうか。無理するなよ」
「はい。先生も」
それじゃと互いに歩き出す。踏み出す足の一歩一歩が妙にふわついて笑えてきた。この年で、いまさらこんな気分を味わうとは。クツクツ漏れる笑いを抑えることが出来ない。校長室の扉を閉め、一人になったことに安堵して声を上げて笑った。おかしい。本当に、笑える。彼と付き合ってもう十年以上だ。互いに四十を越え情熱も無くなったが、いずれは穏やかな余生をと思っていたのは俺だけらしい。そのことに気づいて足元に不安を覚えるほど動揺するなんて。
「いい年をして」
掠れた笑い声に湿り気が混じりそうで扉に額をつけて目を閉じた。
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