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 わいわいと賑やかな広間はたくさんの人で埋め尽くされている。合コンというのはこんな大勢で行うものだっただろうか。消えない疑問にぐるりと周囲を見回して再確認した。これは最早お見合いパーティーだな。想定の倍から三倍の人数だが、その分出会いが増えたと言えなくもない。何事も捉え方次第だ。

「そうじゃないだろお~。俺はツグミ先生とお話ししたかったんだよお」
「そうだよなあ」
「慰めにはならなかったか」
「イルカは気遣いの方面が間違ってると思う」
「一応自覚はある。けどなあ」
 テーブルに顎をつけたコテツがじっと一点を見つめている。お目当てのツグミ先生が頬を染めて一生懸命話しかけているのは、にこやかな顔でグラスを傾けるゲンマさんだ。努めてそこを見ないようにしていたのだが仕方がない。三本の手がわしわしと元気のない頭を撫でまわす。コテツが低い声を絞り出した。
「不知火ゲンマのしーは信じられないくらいイケメンのしぃ~」
「あのイケメンが相手じゃ仕方がないの“し”ってどうだ?」
「そっちのが真意だなあ」
「らーはラッキースケベたくさんだろうな!のら~」
「コテツ言い過ぎ」
「アルコールは怖いな。欲望がどストレート」
「止めなくていいのか?」
「全部聞きたい」
「どこまでいけると思う?」
「げは難しくないか?」
「どっちにしろ“ん”でアウト」
「ぬーはぬばたま顔負け栗色ヘアー」
「……どういう意味だ?」
「高尚なことを言ってみたかったんだろ」
「コテツ水飲め」
「いーは!!」
「「「はい」」」
「いとしのツグミ先生をぉ~」
「分かった、分かったからな」
「水なんていい!好きなだけ飲め!」
「すいませーんお代わりお願いします。あ、お疲れ様です」
「うん」
 聞き慣れた声に振り向くとカカシさんが立っていた。

「ごめんね。ちょっと遅れちゃった」
「おかえりなさい」
 俺の隣に腰を下ろすと同時にささっとどこからかおしぼりやコップが回ってきた。中忍はここら辺抜け目がないのだ。まずは一杯とグラスを受けながら首を傾げる。
「コテツくんはどうしたの」
「どうしたも何も。カカシさん何したんですか?」
「めっちゃ参加人数増えてるんですけど。主に上忍と特上の方々が」
「え、これ俺のせい?」
「紅さんにお願いしたんじゃなかったんですか」
「そうだよ。待機所でどう?って聞いて」
「周りに誰かいたでしょ」
「えー何ですかあー?とか言ってくるくの一いませんでした?」
「……いた、けど」
 三つの大きな溜め息と、ううっといううめき声が重なった。きょろきょろ四人を見回している人はちっとも分かってないようだ。カカシさんが飲み会のチラシを持っているとなったら、大勢のくの一達が参加したいと思うだろう。そのくの一を狙って男共が群がれば大宴会の完成だ。イワシを騙って部屋の交換までしてくれたんだから、鮮やかとしか言いようがない。こっちは来てビックリしたんだぞ。
「あー……何かごめんね」
「しょうがないっすよ。カカシさんと飲めるならーって女子は多いだろうし」
「まだ希望を捨ててないくの一は、こんなにいたんだなあ」
「ま、返り討ちにしてやるけど」
「おーイルカ格好いい!」
「本妻の余裕だな」
「まかしとけ」
「先生……」
 俺が恋人に流し目を決めた所でダンッ!!と大きな音が響いた。コテツが拳を思い切りテーブルに叩きつけている。
「俺も、俺もおぉ~」
「分かった俺が悪かった」
「ほらおでんだぞ」
「コテツくん荒れてるねえ。あれが原因?」
「はい」
「ふーん」
 ゲンマさんとツグミ先生は、相変わらず楽しそうに話している。黙って眺めていたカカシさんがビールを一口飲んで首を捻った。
「ゲンマのタイプとは違う気がするけど」
「ですよね。俺もずっと違和感があったんですよ」
「え、何だよイズモ」
「ゲンマさんって、もっとセクシー系とかキリっとしたタイプと歩いてることが多くないか?」
「言われてみれば確かに……」
「ゲンマさんがゆるふわ系と歩いてるのってあんまり見ないよな」
「でもあんなに盛り上がってるじゃないですかあ~」
「聞くほうが早いよ」
 カカシさんがゲンマさんへひらひらと手を振る。気づいた者が奥のテーブルへと伝言して、ほどなくゲンマさんが現れた。コテツがグラスを両手で握り締めて息を吸う。



 コテツはすごく頑張ったと思う。もう勝負がついている(ように見える)相手に勇気を出して聞いたのだ。けどゲンマさんは、ぶはっと吹き出すとゆるく首を振った。
「あーないない。っていうかイルカは知ってるだろ」
「俺ですか?」
 一斉に視線が突き刺さる。何だ?ツグミ先生は新任でまだそんなに話したことがないのだが、自己紹介で何か言ってたっけ。
「アカデミーで言ってなかったか?許嫁がいるだろ」
「い、許嫁~~!?」
「彼氏とかじゃなくて、許嫁?」
「結婚するって決まってるんですか」
「そうそう」
 ぽかんと口を開けていたコテツが俺を見て、テーブル越しに掴みかかってきた。
「おいっ!!イルカあ~~っ!!」
「悪い!知らんかった!」
「何でだよ!ゲンマさんの言い方じゃ公認ぽいじゃねえか!」
「着任早々粉かけられて、ぴしゃりとやったって言ってたぞ」
「おっと。見かけによらず気が強そうな感じ」
「ゆるふわは外見だけだな」
「イ~ル~カ~」
「初耳だよ!本当に知らなかったって!」
 まあまあとカカシさんがコテツの手を解いた。ふうふう言っているコテツをイズモとイワシが両脇から宥めている。どさくさ紛れにカカシさんの手が肩に回ってきた。それはいらん。
「イルカには言う必要が無かったってことだろ。知らなくてもしょうがない」
「ゲンマさん知ってたぽいですね」
「許嫁と同じ任務に就いてたんだよ。で、話は聞いてたってわけ」
「なるほど」
 コテツの頭が今度こそがっくりと落ちた。可哀想だけど、こればっかりはままならないものだ。むしろこの場で知って良かったかもしれない。こんなに大勢集まっているのだから、新しい出会いを見つければいいだろう。
 さて、それなら改めて勝負の開始だ。

「カカシさん。プランBです」
「はいはい。イワシくんお代わりお願いして来てくれる?」
「はい」
 注文を伝えにイワシが席を立つ。部屋から出たのを確認してポーチから手のひらサイズの小箱を取り出した。蓋を開けると、中には金色に輝く透明な固まりがたくさん詰まっている。
「キレイですね。これは砂糖……ですか?」
「琥珀糖って言うんだって。はちみつ酒で作ったらしいよ」
「じゃあアルコールが入ってるんだ」
「そのまま食べても良いし、炭酸水や酒に入れて風味付けにしたり。色々楽しめるの。はいあーん」
「ん」
 つられて口を開けてしまった。はちみつのトロリとした甘さとアルコールが香って美味い。歯ごたえも何とも言えない不思議な感じだ。
「それどうするんですか」
「イルカへの土産じゃねえの」
 カカシさんと二人、んふふと笑っているとグラスを持ったイワシが戻って来た。
「お待たせしました。うわ何ですかそれ。キレイですね」
「ほいイワシ」
「え?」
「それね、アンコに頼まれたの。グラスと一緒に持ってってやって」
「え?え?」
 うろたえるイワシをイズモがけしかける。
「早くしねえと酒が温くなるぞ」
「冷たいものは冷たい内に!」
 やけくそ気味にコテツが叫んだ。やっとテーブルから離れた顎を突き出してニッと笑う。
「お前ら……覚えてろよ」
「行ってらっしゃーい」
 カカシさんとゲンマさんに手を振られてイワシが歩き出した。緊張した背中をみんなで見送る。もう一つの幕が上がった。
2021/09/01(水) 00:08 短い物 COMMENT(0)
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