◆各種設定ごった煮注意

解説があるものは先にご確認ください
 ボクの先輩は強くてビンゴブックに載るほどの忍で、それなりに尊敬を集める人でありました。
「はたけ上忍っ!」
「カカシさーん」
「カカシ!おいカカシ!」
 まあね、今この部屋を埋め尽くす呼び声はそれとは違う音色と熱気を帯びているわけで、さすがのボクも空笑いが止まらないってもんだ。横では大きなため息が一つ。
「参りましたねー。これじゃ受付は機能停止だ」
「こんなはずじゃ、こんなはずじゃなかった……」
 しくしくと漏れて来る泣き声にイルカ先生が苦笑いをする。ボクとしては面倒ごとからさっさと逃げ出したいと思う気持ちと、こんな面白いことを見物せずにいられようかというワクワクが半々。先輩を囲っている檻を作った手前、逃げ出すも何も無いんだけど。わらわらと人のたかる木製の檻の中でうずくまるあの背中、本当にはたけカカシなんだろうか。いや、あの人は案外抜けた所が……違うな、いけるデショでいっちゃう所が……、いやそれは無謀とかじゃなくて一流の忍による判断の
「どうかしました?」
「いいえなんでも」
 どれだって一緒だろう。恋する男がポンコツだってのは、古今東西よくある話だし。
 室内に響く先輩を呼ぶ声、時折漏れる啜り泣き、こんこんと檻を叩く音が混じり合ってカオスだ。この場にいる中で正気なのはボクとイルカ先生くらいだろう。まったく何をどうやったらこんなことになるのだか。偉大な忍の弟子ってのも要注意かもしれない。
「しゃーんなろーっ!!」
「来ましたね」
「ようやく」
 ぼんと入口のドアが吹っ飛んで、サクラが飛び込んできた。元凶がようやく到着だ。人並みを掻き分けて手を振るイルカ先生の元までやってくる。後ろを悠々と歩いて来るのはその師匠だ。
「解毒薬はあるのか」
「もちろんです」
「飲ませるのはもうちょっと待たんか」
「綱手様!面白がってる場合じゃないでしょう」
「受付としては、これ以上業務がストップすると困るのですが」
「固いことを言うな。息抜きも必要だろう」
「人を余興にせんでください!」
 檻の中から悲鳴が響き、綱手様が大笑いする。イルカ先生の言う通りだ。確かにこのままじゃ収集がつかない。先輩をボクの檻に閉じ込めるっていうのはなかなかできない体験だったが、もう十分堪能した。これ以上は後が怖い。人間引き際を間違えてはいけないのだ。
 サクラが持っていた解毒薬をもらった。さっさと渡して飲んでもらおう。そうすれば、自分を見た人間をすべて魅了するなんていう厄介な薬の効果も切れる。
「俺が行きますよ。万一のためにヤマトさんは手が空いてた方がいいでしょ」
 じゃ、と一声残して人波を掻き分け始める。
「イルカは正気なのか」
「はい」
「へーえ……。最初から説明してみな」
 綱手様の促しにサクラが首を竦めた。決まりが悪いだろうが仕方ない。始まりはこの子なのだ。

 はたけカカシが恋をしている。それは一部では有名な話だった。忍一筋だった男の不器用な片思いは、見る側をジリジリとさせ時に涙腺を緩め、ようするに応援したくなる姿をあちこちで晒していたのだ。彼の部下の一人が時に暴走を辞さない乙女だったのは、良かったのか悪かったのか。健気な上司の恋を成就させんがために作り上げたのは、その知識と情熱を注ぎ込んだ惚れ薬。
『この薬を飲んだら必ず好きになってしまいます。先生頑張って!』
 うん!と大きく頷いた先輩は、受付に座るイルカ先生にぎこちなさ満載で薬入りの飴を渡した。
「ありがとうございます!乾燥してるのかちょっと喉が痛くって。すぐ頂いて良いですか?」
「もちろんです」
 ニッコリ笑ったイルカ先生は飴玉の紙を剥いた。目玉が落ちるんじゃないかと思うくらい見つめる先輩の前で、摘んだ淡い桃色の飴を口元へー
「あ、そうだ。俺も飴持ってるんです。お返しにどうぞ」
「えっ?あ、はい」
「はいあーん」
 ポーチから取り出した飴を剥いて、素早く下ろした口布の中に押し込む。
「あ、間違えた」
 すいませんと広げた手の中には、薄い水色の飴玉が乗っている。
「はたけ上忍!!」
 カウンター内にいた中忍が顔を真っ赤にして叫んだ瞬間、即座に印を組んだ。誰かボクを褒めてくれ。

 腕を組んだ綱手様がカウンターにどすんと尻を乗せた。
「いい根性してるね」
「申し訳ありません……。薬を飲んだ人が、見た相手を好きになるよう作ったつもりだったんですが」
「薬を飲んだ人間を見たら無制限に惚れちゃうってのもすごいけどね」
「ああ、お前じゃないよ」
「え?」
「それくらいの根性がなきゃ受付なんて出来ないんじゃないですかね」
「え?」
「それもそうか」
 人垣の中でぴょこぴょこと黒髪の先っぽが揺れる。大勢の人を掻き分けて戻ってきたイルカ先生は晴々とした顔をしていた。
「渡しました。サクラ、どれくらいで効いてくる?」
「ええと、そうですね、十分もしたら完全に」
「ほう、じゃあ十分の間に考えんとなあイルカ」
 トントンと腕を叩く赤い爪がイルカ先生を指した。ふっと笑って腕を組む。
「考えるのは俺じゃないでしょう。俺以外に口布を下ろせる奴がいるなら教えてほしいもんですよ」
 若干静かになった背後を振り返り、どうなるかなと笑う。
 やはり敢えての「あーん」だったか。わざわざ受付で見せつけた意味が不器用な男にも伝わると良いのだが。忍というのは侮ったらいけない。たとえどれほど人畜無害に見える人であってもだ。
「十分経ったら術を解いていいですか」
「助かります」
「本当に?」
「ええ。何故?」
「あれでも一応はたけカカシなので。答を見つけたら真っ先に披露しにくると思うんですけどね。つまり公衆の面前で」
 盛大な告白劇が始まりますよ、とまでは言わなかったが察した顔が爆発するように赤くなった。じり、と後ずさりし始めた姿に手を合わせる。どうやら二つ目の檻が必要らしい。まったくどいつもこいつも手がかかる。



2021/08/22
2021/08/29(日) 02:50 ワンライ COMMENT(0)
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