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 この世で一番めんどくさいものなーんだっ!!うん当たり。おう、それもある。分かる!残業あとの風呂!もう水すらいらねーから寝かせてくれってなるよなあ。うんうん。ん?俺?俺はねー喧嘩の仲直り。喧嘩のあとはほっぺにチュって……お前マジで言ってんの?ムスッと不機嫌な顔して黙り込むあの顔面にチュってすんの?俺が?いやー無理。絶対無理。怒ってる時のカカシさん超こええよ。触れたら切れるっつーか、睨みつける眼光で焼き切れますって感じ。それをかい潜ってちゅーすんの。ほっぺに。出来たら俺伝説を超えるよ?中忍だけど木ノ葉の伝説になるわ。わはは。


 うん。やっぱ一緒に住んでるとさ、無視は出来ねえよな。はい出た!どんだけ喧嘩しても一緒の布団で寝れば仲直り!そうそう人の温もりってさ、なんか不思議な力があるよな。最初はベッドの端っこと端っこで寝てたのに、朝起きたらぴっとり背中に張り付かれてたり、くすぐったくて目が覚めたら誰かさんの柔っこい銀髪が顎をさわさわしてたりな。あるある。あるけどさ、それって仲直りって言えねえじゃん。流されただけっていうか。とりあえず朝は茄子の味噌汁を出してみたりするけど。カカシさんは朝からカップラーメン食べさせてくれねえけど。でもなーんか、なーんかだよ。それでいいのかなって思うわけだよ。ちゃんと謝って話し合って仲直りしてって、そういう過程が必要なんじゃねえかなあ。最近そう思うんだよ、俺。


 ダメ。無理。そうは言うけどさ、九割俺が悪くても、一割あっちが悪かったらごめんなさいって言いたくなくねえ?だって俺だけ悪いわけじゃねえのにさあ。……言う。カカシさんはすぐ「ごめんね」って言う。むしろ即言う。あの人は言いすぎなくらい。俺はあの人の「ごめんね」は嫌い。大っ嫌い。違う。謝ってくれるからいいじゃんとかじゃねえの。謝り方は普通。むしろ真摯。ちゃんと、すっごくちゃんと謝るよ。違う。だから嫌なんだよ。……カカシさんの「ごめんね」は「愛してる」なんだ。ちーがーう!惚気じゃねえっ!あの人はいつも本当に心をこめてごめんねって言うんだ。でも目を見ると、その奥が怖がってる。俺が怒っていなくなるんじゃないか、愛想を尽かして消えるんじゃないかって怖がってる。俺さあ、別にカカシさんが何したって怒らないけど。いや、怒るけど。ん?んーーーー……。怒るけど嫌になってるわけじゃなくて、その時うんざりした顔になってたとしてもあの人を嫌いになったとかじゃなくて、つまり。そう!それ!カカシさんは俺のこと信用してない。俺さ、それなりに好きって表してるつもりだけど、伝わってないみたいでさ。カカシさんが「ごめんね」って言うのは、「愛してるよ。だから許して傍にいて」ってことだからなんか嫌なの。うん、ありがとな。


 いや、一緒。あの人の「ごめん」にそんな意味があるって分かってるのに、そう簡単には言えねーだろー!俺が「ごめんなさい」って言ったら、それは「愛してる」って受け取られるんだぞ。違う、考えすぎじゃない。きっと自分と同じ応えをもらって安心するんだあの人は。だから俺、謝らなくなっちゃった。それこそなんとなく朝起きて味噌汁食べたらオッケーみたくなってて、それがさあ!すげえ嫌なんだよ!なんだよこの距離!倦怠期かよ!俺カカシさんのことすげー好きなのに、ごめんなさいってほっぺにちゅーしたいのに出来ねえの!まだまだあの人とわあわあ言って喧嘩して仲直りしたいのに無理!出来ない!なんでだよおー!!

 ん?うん。いーよ。愛してるって言っても。だけどさ、それはちゃんと愛してるって言いたいの。それにさ、あっちが「ごめんね」で誤魔化してるのにこっちばっかり全力の「愛してる」を投げるのは悔しいじゃん……。俺はちゃんと愛してるって言いたいのに、「ごめんなさい」を勝手に変換して満足されちゃう俺って何よ……ってなるだろ。いちゃいちゃ?するよしてるよ当たり前だろ。だから余計に嫌なの。なんでそんなに信じてくれないんだよ。あんなにいっぱ………………悪かった。でもほら男としてさ、そういう時の好きは信用しねえから。おう。乾杯。


 毎回思うんだよ。次はちゃんと謝ろう。味噌汁で誤魔化さないでちゃんと話し合おうって思うの。でさ、昨日喧嘩した。いやマジ。だけどやっぱりダメでさ、じゃあ朝起きたらーって思ってたのにさ、いなくなってた。んーん、任務。帰ってきたらちゃんと言うよ。ごめんなさいって言わなくても好きですよって。ごめんなさいって言わないけど愛してますよって。ごめんなさいって言ってもいいけど、ちゃんと話しましょうって。俺ね、決めたの。でも帰って来なかった。だからちょっと疲れちゃって、ちょっとだけ飲もうかなって思ったんだわ。ありがとな付き合ってくれて。うん。うん。絶対する仲直り。あんたが何言ったってもう遅いんだよってぎゅうううーって抱き着いて言うわ。うん。うん。うん。






「ってことです」
「……うん。分かった……」
「連れて帰ってもらえます?」
「うん。あの、なんかごめんね?」
「いえ。一日帰還が遅れただけでこうなんで、相当煮詰まってたんじゃないすかね。起きたら話聞いてやってください」
「そうするね。あ、ここのお代は俺が」
「「……」」
「どうぞ」
「あ、ありがと」
「それ渡すの、話終わってからのがいいかもしれませんね。いや、寝てる間に指にはめちゃった方がいいのか?」
「あっ、いや、これはそういうのじゃなくて、何かお土産をってだけだから、本当に、うん」
「わざわざ?任務の帰りに?」
「……昨日、ケンカしたから」



2021/02/21
2021/08/29(日) 02:24 ワンライ COMMENT(0)
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