◆各種設定ごった煮注意

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◇寂しそうに

 朝日が目に染みる。労働開けの体を引き摺って歩くにはいささか眩しすぎる道だ。朝焼けが失せた後の空は一層光が強く、全身を突き刺すような光が痛いほどだった。
 さっさと帰ろうと手近な木へ飛び上がる。朝の里を眺めつつ走っていると、道の真ん中に蹲る塊が視界に入り、駆けていた足から力が抜けた。ただの丸い塊が誰の姿なのか、どうして分かってしまうのだろう。その特徴的な髪型を見るまでもなく、蹲るシルエットだけで胸が騒ぐ。
 そっと地面に降り立ち、ゆっくりと近づいた。具合でも悪いのか、怪我をしているのではないかと思ったが、先生の足の横にぴょこりと飛び出た尻尾に気づき足が止まる。ゆらんゆらんと揺れる尻尾に誘われて、気配を殺して距離を縮めた。
「んなーあ」
「どうした?もう行くのか?」
「にゃーお」
「待ってるヤツがいるならしょうがないなあ。付き合ってくれてありがとな」
「んにゃん」
「……あの人はいつ帰ってくるんだろうなあ。俺はおかえりなさいって言えるかな。なぁ?」
 くるると小さな音が聞こえて猫は走り去ってしまった。先生は猫が走り去った後をじっと見つめたまま動かない。気づかれないのを良いことに、気配を消したままそっと立ち去った。
 誰かを思う先生にかける言葉なんて思いつかない。おかえりなさいをもらえるのが、俺だったら良かったのに。ため息を飲み込んで木の上を駆ける。家へ着いたら、何も考えずにベッドへ倒れ込んでしまおう。
2021/10/09(土) 00:53 お題もの COMMENT(0)
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