◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
うさぎが月を見て跳ねるように、俺はあの人を見ると心が跳ねるんだよね。と言ったら、後輩が口で受けるはずの酒をだばあとこぼした。
何をやっているんだとおしぼりを渡せば下を向いて一心不乱に拭きだしたので、再び口を開こうとした瞬間風が吹き。やれやれと店を出て、いまは一人歩いている。
あいつには少し理解が出来なかったのかもしれない。そもそも、月を見たうさぎが跳ねるっていう歌自体を知らなかったのではないだろうか。
そうだとしても無理はない。俺だって知ったのはつい二日前。先生がアカデミーの子どもたちと、月見の準備だと言ってススキを抱えて歩いているのを見た時なんだから。
子ども達と声を揃えて歌う先生はとても楽しそうで、思わず心がぴょんぴょんした。その時のなんとも言えない浮遊感を誰かに伝えてみたかったのだが、相手を間違えたのだろう。あいつのどこをどう切ったって、「心がぴょんぴょん」なんて出てきそうにない。
突如消えてしまったのは、自分の中にない感情を理解できず処理仕切れなかったからだ。それは先輩として許容してやるべきだし、どうとも思わないけれど。
ただ、今夜の月はとてもキレイで、それこそ本当に心の中のうさぎが飛び跳ねて騒がしく、誰かに言ってみたかった。テンゾウを選んだのはたまたま手近にいたからにすぎなくて、一番伝えたい相手は分かっている。
その人は今頃、子どもたちと月を見て笑っているだろうから、残念ながら忙しい。先生はいつも忙しく常に誰かが傍にいて、俺は遠くの方から見つめては心を跳ねさせるだけ。まさに今夜の月のよう。光を振りまく月を煽ぎ、足を止める。眩しくてとても美しい。
行くはずだった道に背を向ける。やけに大きく映る月に向かって歩き出した。家へ続く道とは逆方向、アカデミーの方へ。
一生懸命跳ねる心の中で確かに感じていた。どれだけ跳ねても届くものかと、跳び上がろうとするたびに鈍い痛みが走る。日に日に大きくなる痛みは、それでももっと高くと飛び跳ねる心を妨げることは出来なかった。
だって月はいい顔をする。こんなに大きくて煌々と照らすから、ひょっとして少しは近づいているのではないかと勘違いしてしまうではないか。
今夜の月はとても大きくて明るいから、いままでで一番手が届きそうな気がする。聞いてみてもいいだろうか。子ども達がいなくなった後、ものすごく大きなジャンプをするから、届きますかって聞いてみても。
「……なんて。うまくいくわけないでしょ」
アカデミーの校庭はがらんとして、誰もいなかった。張り切って運んでいたススキはどこへ行ったのか。浮かれながら校庭に運ぶぞって言ってたくせに。
跳びそこなったうさぎは未練がましくぶちぶちと、届かない月へと恨みをこぼす。分かっていたのに愚かなことだ。煌々とした月明かりさえ腹立たしい。
はーあとため息を吐き、睨んでいた月から地面へと視線を落とした。真っ黒な校舎の影がさらに気を滅入らせる。
もう帰るかと最後に影をひと睨みしたら、校舎の影からにょっと黒い耳が生えた。よくよく見ると、大きな二つの房の間にもう一つ小さな影が見える。はっとして顔を上げると、アカデミーの屋上で揺れるススキの束が二つ。
「あれー?カカシさんじゃないですか。こんな時間にどうかしましたか?」
呑気な声と共に、両脇にススキの束を抱えた先生が屋上の手すりから顔を出した。
「先生は、どうして」
「今日は子ども達と屋上で月見をしてたんですよー。もう解散したので俺は片付けを」
先生がわさわさとススキを振る。まるでおいでと言うように。
「跳びます」
「え?」
「そこまで跳びます」
黒い影が少し傾く。逆光で見えないけれど、不思議そうな顔をしてる気がする。
先生の表情を想像すると心が跳ねた。あそこまで跳びたい。
「カカシさん」
「待ってて」
足に力をこめ、彼の元へ思い切り跳び上がった。
2022/09/11
何をやっているんだとおしぼりを渡せば下を向いて一心不乱に拭きだしたので、再び口を開こうとした瞬間風が吹き。やれやれと店を出て、いまは一人歩いている。
あいつには少し理解が出来なかったのかもしれない。そもそも、月を見たうさぎが跳ねるっていう歌自体を知らなかったのではないだろうか。
そうだとしても無理はない。俺だって知ったのはつい二日前。先生がアカデミーの子どもたちと、月見の準備だと言ってススキを抱えて歩いているのを見た時なんだから。
子ども達と声を揃えて歌う先生はとても楽しそうで、思わず心がぴょんぴょんした。その時のなんとも言えない浮遊感を誰かに伝えてみたかったのだが、相手を間違えたのだろう。あいつのどこをどう切ったって、「心がぴょんぴょん」なんて出てきそうにない。
突如消えてしまったのは、自分の中にない感情を理解できず処理仕切れなかったからだ。それは先輩として許容してやるべきだし、どうとも思わないけれど。
ただ、今夜の月はとてもキレイで、それこそ本当に心の中のうさぎが飛び跳ねて騒がしく、誰かに言ってみたかった。テンゾウを選んだのはたまたま手近にいたからにすぎなくて、一番伝えたい相手は分かっている。
その人は今頃、子どもたちと月を見て笑っているだろうから、残念ながら忙しい。先生はいつも忙しく常に誰かが傍にいて、俺は遠くの方から見つめては心を跳ねさせるだけ。まさに今夜の月のよう。光を振りまく月を煽ぎ、足を止める。眩しくてとても美しい。
行くはずだった道に背を向ける。やけに大きく映る月に向かって歩き出した。家へ続く道とは逆方向、アカデミーの方へ。
一生懸命跳ねる心の中で確かに感じていた。どれだけ跳ねても届くものかと、跳び上がろうとするたびに鈍い痛みが走る。日に日に大きくなる痛みは、それでももっと高くと飛び跳ねる心を妨げることは出来なかった。
だって月はいい顔をする。こんなに大きくて煌々と照らすから、ひょっとして少しは近づいているのではないかと勘違いしてしまうではないか。
今夜の月はとても大きくて明るいから、いままでで一番手が届きそうな気がする。聞いてみてもいいだろうか。子ども達がいなくなった後、ものすごく大きなジャンプをするから、届きますかって聞いてみても。
「……なんて。うまくいくわけないでしょ」
アカデミーの校庭はがらんとして、誰もいなかった。張り切って運んでいたススキはどこへ行ったのか。浮かれながら校庭に運ぶぞって言ってたくせに。
跳びそこなったうさぎは未練がましくぶちぶちと、届かない月へと恨みをこぼす。分かっていたのに愚かなことだ。煌々とした月明かりさえ腹立たしい。
はーあとため息を吐き、睨んでいた月から地面へと視線を落とした。真っ黒な校舎の影がさらに気を滅入らせる。
もう帰るかと最後に影をひと睨みしたら、校舎の影からにょっと黒い耳が生えた。よくよく見ると、大きな二つの房の間にもう一つ小さな影が見える。はっとして顔を上げると、アカデミーの屋上で揺れるススキの束が二つ。
「あれー?カカシさんじゃないですか。こんな時間にどうかしましたか?」
呑気な声と共に、両脇にススキの束を抱えた先生が屋上の手すりから顔を出した。
「先生は、どうして」
「今日は子ども達と屋上で月見をしてたんですよー。もう解散したので俺は片付けを」
先生がわさわさとススキを振る。まるでおいでと言うように。
「跳びます」
「え?」
「そこまで跳びます」
黒い影が少し傾く。逆光で見えないけれど、不思議そうな顔をしてる気がする。
先生の表情を想像すると心が跳ねた。あそこまで跳びたい。
「カカシさん」
「待ってて」
足に力をこめ、彼の元へ思い切り跳び上がった。
2022/09/11
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