◆各種設定ごった煮注意
解説があるものは先にご確認ください
飲み比べしようと誘ってきたのは向こうだった。喜んでと頷いた俺は、不純な内心を隠して彼についてきたのだが、自身の欲望に飲み込まれそうになっている。冷たい水に手を浸した所で胸の奥の燻りは収まらない。本格的に火が熾る前に、退散するべきかもしれなかった。
ため息を吐いて襖に手をかける。部屋の中を見て、さらに深いため息が出た。俺が席を立つ前はまだまだと笑っていたくせに、どう見ても眠っている。
自分の席へ戻ろうとして、足の向きを変えた。壁にもたれかかり目を瞑る彼の横へ。無防備な寝顔は、隣に座っても気づく気配が無い。
いつもは額当てに上げられている前髪が、一房額へと落ちている。たったそれだけで普段の先生とは別人のように見えて、つい手が伸びた。指先が髪へと触れる寸前で微かな吐息を感じ、我に返る。
いま目を覚まされたら、言い訳のしようがないだろう。髪へ触れるはずだった指先はテーブルの杯を引き寄せた。カチン、と皿の触れ合う音に隣の気配が変わる。
「あれ……」
「起きました?」
「あー……、ちょっと目を瞑っただけだったんですけど寝ちゃいました?」
「ぐっすりと。俺が戻ってきたの、気づかなかったでしょう」
「そうか~あ。じゃあ俺の負けだー」
ははっと笑いながら垂れた前髪を掻き上げる。これで先生の前髪に触れる機会は失われてしまった。ホッとしたような、残念なような、自分の不甲斐なさに呆れるような。
仕方がないと持ち上げた徳利を横からさらわれた。双方の杯を満たすと景気よく呷る。
「ではどうぞ」
「え?」
「敗者には罰ゲームが付き物ですので。何がいいかなあ。ここ奢りますって言いたい所ですが」
「今日結構飲んでるよ?」
「ですよねー」
「先生と飲めて楽しかったから、罰ゲームは無しで」
「それはそれでちょっと、って感じですよ。何かしらないと。じゃあ、質問になんでも答えるとかで勘弁してもらえます?」
「何でも?」
「男に二言はありません!」
ドンと胸を叩いたので、また前髪がはらりと落ちた。俺がその髪に触れる権利はありますか?って聞いたら、どんな顔をするんだろう。
「遠慮しないでどうぞ!」
「……好きな人はいますか」
さすがに気持ち悪過ぎると自制が働き無難な質問になったが、何より聞きたいことでもある。
まあいいと思った次の瞬間、激しく後悔した。質問を聞いた先生の顔が一瞬で赤くなった。体の中で何かが弾けたように、横を向いて搔く首筋まで赤い。
「カ、カカシさんからそんな質問がくるとは思わなくって」
先生の動揺が突き刺さる。噂の一つすら上がらない人だから、勝手に答えを決めつけていた。だが目の前の顔は、明らかに違う答えを持っている。
誰を思ってそんな顔をするのか。軽い気持ちで投げた問いかけは、彼ではなく俺自身を痛めつけた。
「何でも、いいんでしょ」
「そう言いましたけど」
うーんと唸りながら彷徨う視線が忙しない。左、右、左。上を見て少し考え俯き、もう一度左。右隣に座る俺から見える耳すら真っ赤に染まって。動揺が映し出す彼の心が、胸を軋ませる。
ふう、と息を吐いた顔がこちらへ向いた。
「もういい」
「え?」
何かを告げようとした顎を捉えた。髪へ触れることすら躊躇っていた指先が、彼の顎を掴む。
答えを聞いてしまったら、永遠に先へ進むことは無い。だから、知らなかったと嘘を吐こう。
口布を下ろし、半開きの唇を塞いだ。びくりと震えた唇に胸をつかれ、より強く押し付ける。目を開いたら、彼の答えが分かってしまう。そんなものは見たくないと、きつく目蓋を閉じた。
2022/02/27
ため息を吐いて襖に手をかける。部屋の中を見て、さらに深いため息が出た。俺が席を立つ前はまだまだと笑っていたくせに、どう見ても眠っている。
自分の席へ戻ろうとして、足の向きを変えた。壁にもたれかかり目を瞑る彼の横へ。無防備な寝顔は、隣に座っても気づく気配が無い。
いつもは額当てに上げられている前髪が、一房額へと落ちている。たったそれだけで普段の先生とは別人のように見えて、つい手が伸びた。指先が髪へと触れる寸前で微かな吐息を感じ、我に返る。
いま目を覚まされたら、言い訳のしようがないだろう。髪へ触れるはずだった指先はテーブルの杯を引き寄せた。カチン、と皿の触れ合う音に隣の気配が変わる。
「あれ……」
「起きました?」
「あー……、ちょっと目を瞑っただけだったんですけど寝ちゃいました?」
「ぐっすりと。俺が戻ってきたの、気づかなかったでしょう」
「そうか~あ。じゃあ俺の負けだー」
ははっと笑いながら垂れた前髪を掻き上げる。これで先生の前髪に触れる機会は失われてしまった。ホッとしたような、残念なような、自分の不甲斐なさに呆れるような。
仕方がないと持ち上げた徳利を横からさらわれた。双方の杯を満たすと景気よく呷る。
「ではどうぞ」
「え?」
「敗者には罰ゲームが付き物ですので。何がいいかなあ。ここ奢りますって言いたい所ですが」
「今日結構飲んでるよ?」
「ですよねー」
「先生と飲めて楽しかったから、罰ゲームは無しで」
「それはそれでちょっと、って感じですよ。何かしらないと。じゃあ、質問になんでも答えるとかで勘弁してもらえます?」
「何でも?」
「男に二言はありません!」
ドンと胸を叩いたので、また前髪がはらりと落ちた。俺がその髪に触れる権利はありますか?って聞いたら、どんな顔をするんだろう。
「遠慮しないでどうぞ!」
「……好きな人はいますか」
さすがに気持ち悪過ぎると自制が働き無難な質問になったが、何より聞きたいことでもある。
まあいいと思った次の瞬間、激しく後悔した。質問を聞いた先生の顔が一瞬で赤くなった。体の中で何かが弾けたように、横を向いて搔く首筋まで赤い。
「カ、カカシさんからそんな質問がくるとは思わなくって」
先生の動揺が突き刺さる。噂の一つすら上がらない人だから、勝手に答えを決めつけていた。だが目の前の顔は、明らかに違う答えを持っている。
誰を思ってそんな顔をするのか。軽い気持ちで投げた問いかけは、彼ではなく俺自身を痛めつけた。
「何でも、いいんでしょ」
「そう言いましたけど」
うーんと唸りながら彷徨う視線が忙しない。左、右、左。上を見て少し考え俯き、もう一度左。右隣に座る俺から見える耳すら真っ赤に染まって。動揺が映し出す彼の心が、胸を軋ませる。
ふう、と息を吐いた顔がこちらへ向いた。
「もういい」
「え?」
何かを告げようとした顎を捉えた。髪へ触れることすら躊躇っていた指先が、彼の顎を掴む。
答えを聞いてしまったら、永遠に先へ進むことは無い。だから、知らなかったと嘘を吐こう。
口布を下ろし、半開きの唇を塞いだ。びくりと震えた唇に胸をつかれ、より強く押し付ける。目を開いたら、彼の答えが分かってしまう。そんなものは見たくないと、きつく目蓋を閉じた。
2022/02/27
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